イソフラボンの脳梗塞予防効果をチェック

イソフラボンは女性ホルモンに似た働きがあり、美容や骨粗しょう症予防が期待できる成分です。女性の味方という印象がありますが、実際はどういった効果をもたらす成分なのでしょうか。ここではイソフラボンの効果効能について解説しています。

イソフラボンとはどのような成分?

大豆イソフラボンの効果イソフラボンは主に大豆や葛(くず)といったマメ科の植物から摂れるポリフェノールの一種です。
さまざまな種類があり、大豆に含まれるイソフラボンは「ゲニステイン」「ダイゼイン」と呼ばれているそう。大豆を原料とする加工食品にはほとんどイソフラボンが含まれています。イソフラボンの特徴としてあげられるのが、女性ホルモンの「エストロゲン」と似た働きをもっていること。
エストロゲンは美しい肌や丈夫な骨をつくるうえで欠かせません。更年期と言われる40~60歳前後の女性はエストロゲンの分泌量が減少するため、イソフラボンを意識して摂取することが大切です。
イソフラボンの1日の摂取目安量は40~50mgで納豆なら60g(1パック分)、豆腐なら150g(半丁)が目安になります。大豆由来のイソフラボンを摂取する際、大豆アレルギーを持つ方は注意が必要です。また、妊娠中や授乳中の女性はホルモンバランスが崩れるおそれがあるので、イソフラボンの摂取には注意しましょう。

イソフラボンの効果効能一覧

大豆食品に含まれるイソフラボンは、さまざまな成分と糖が結合した「配糖体」です。
体内に摂取されると腸内で糖とアグリコンという形に分解されて体内へ吸収。糖部分が分離したイソフラボンを「アグリコン型」と言い、アグリコン型イソフラボンには更年期症状でみられる「火照り」を緩和する働きがあります。
「日本人間ドッグ学会誌」によると、更年期障害の症状がある14人の女性を対象にアグリコン型イソフラボンを摂取してもらった結果、更年期障害をやわらげる作用が確認されました。
その中でも顔のほてりが目立つ女性11人に対しては、摂取してから2ヵ月経過した頃に顔の火照りの減少が証明されたそうです。
そのほかにも耳鳴りやめまいなどの改善も確認されており、更年期障害にみられるさまざまな症状に緩和効果をもたらします。
また、イソフラボンは肌の老化を防止する効果もあるといわれており、弾力のある肌をつくるために重要なエストロゲンと似た働きを持つ成分。そのため、化粧品や美容サプリメントにも活用されています。

血流改善効果

冷え性や肩こりといった身体の不調を引き起こす原因のひとつが血行不良です。イソフラボンには血液をサラサラにする働きがあり、血流改善効果が期待できます。イソフラボンは血小板が集まって固まる凝集を抑制する作用があり、血管の中で血液が固まる「血栓」を防止。血をドロドロにする原因のひとつである血栓を防止することで、血流を改善します。
「ヘモレオロジー研究会誌」によると、9名の方にイソフラボンを80mg摂取してもらった結果、9名全員に血流改善の効果が見られたそうです。
アグリコン型イソフラボンは2時間程度で体内へ吸収されるため、摂取してから2時間後には血液サラサラの効果があらわれます。

メタボリックシンドローム予防効果

メタボリックシンドロームは「内臓脂肪症候群」とも呼ばれており、さまざまな生活習慣病を引き起こすおそれがあります。食生活の改善や適度な運動などがメタボリックシンドロームを予防するのに大切ですが、更年期にさしかかる女性はとくに注意が必要です。40~60歳前後の女性は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少します。エストロゲンの減少によってコレステロール値が上昇するだけでなく、中性脂肪も増加することでメタボリックシンドロームになりやすくなるのです。イソフラボンにはそんなメタボリックシンドロームを予防する効果があるといわれています。
「日本東方医学会」の資料によると、40~60歳の女性24名を対象にイソフラボンを摂取してもらった結果、コレステロール値や体脂肪率の低下が確認されたそうです。

糖尿病予防効果

糖尿病は1型と2型に分けられ、イソフラボンは2型糖尿病に効果があるといわれています。厚生労働省の研究班は、イソフラボンを多く摂取した女性は2型糖尿病を発症させるリスクが低下するという研究結果を発表。40~69歳の男女約6万人を対象に、イソフラボンの摂取と2型糖尿病発症の関連についての調査を5年間行いました。5年間で2型糖尿病を発症したのは男性が634人、女性が480人という結果に。
イソフラボンを摂取することで糖尿病発症を抑えるといった明らかな関連は男女共に見られませんでした。しかし、摂取量の多さで5つのグループに分類すると、女性では摂取量が多いグループの方がもっとも少なかったグループに比べて、糖尿病の発症リスクが低いという結果が報告されています。

抗がん作用(前立腺がん)

イソフラボンは女性ホルモンの一種であるエストロゲンと似た働きを持っています。血中のテストステロンの低下や発がんの原因となるチロシンキナーゼを阻害することで、前立腺がんの予防に繋がるのです。「多目的コホート研究(JPHC研究)」からも、イソフラボンの摂取により前立腺がんを予防できるという報告があがっています。ただし、予防できるのは前立腺内にとどまる限局がんだけで、前立腺を超えて広がる進行がんや転移がんには効果が見られないそうです。
イソフラボンは限局がんから進行がんになるまでの期間を遅らせる働きがあると考えられています。

組み合わせの良い他の栄養素

ブラックコホシュエキス

ブラックコホシュとは、北米の原住民が古くから使用しているハーブのことです。ブラックコホシュとイソフラボンは、両方とも月経に関するトラブルに効果的であり、同時に摂取することで相乗効果が見られます。
更年期障害の女性に対する検証実験によると、特に「肩こり・腰痛」に対する相乗効果があるとの報告。イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンと同様の働きをし、ブラックコホシュは女性ホルモンである黄体形成ホルモンの分泌を抑制するため、月経トラブルや更年期障害に効果的だと考えられています。

DHA

血液をサラサラにする栄養素として脳梗塞予防にも役立つDHAですが、脳の機能を活性化させる栄養素としても有名です。また、イソフラボンも認知機能の維持に効果的ですが、DHAとイソフラボンの両方を同時に摂取すると、相乗効果によって認知機能が高まると報告されています。
この報告では、イソフラボン単体摂取のグループ、DHA単体摂取のグループ、イソフラボンとDHAを摂取するグループで認知検査を行ったところ、最も高い得点となったのがイソフラボンとDHAを摂取したグループでした。
認知機能を改善するという同じ効果が相乗的に働き、高い効能を発揮してくれるのでしょう。

組み合わせの悪い他の栄養素

イソフラボンと組み合わせることで悪い影響が出る栄養素は、現在のところ報告されていないようです。日本人は昔から様々な食品と同時に大豆を摂取していますし、1日の摂取目安量を大幅に超過することがなければ、特に問題ないと考えられます。

イソフラボンを摂るとなぜ脳梗塞が予防できるのか

イソフラボンは循環器疾患のリスクを低下させるといわれていますが、詳細についてはわかっておりません。
ですが「多目的コホート研究」が行った研究では、女性にだけはイソフラボン摂取による脳梗塞の予防の可能性が確認されました。
40~59歳の男女約4万人を対象に、大豆の摂取量によって3つのグループに分けて脳梗塞・心筋梗塞との関連を調査。大豆を週に0~2日摂取する女性グループよりも、週に5日以上摂取した女性グループのほうが、脳梗塞と心筋梗塞の発症リスクが低いことが確認されたそうです。また、閉経前と閉経後のグループに分けて調べると、閉経後の女性でイソフラボンの摂取が多いほど脳梗塞・心筋梗塞の発症リスクが低いという結果も出ています。脳梗塞や心筋梗塞以外にも、循環器疾患による死亡リスクも低くなったことも確認されたそう。
この研究結果から、女性はイソフラボンを積極的に摂ることで脳梗塞や心筋梗塞を予防できる可能性があることがわかりました。

1日の摂取量の目安

食品安全委員会によると、大豆イソフラボンの1日の摂取目安量は、64~76mgとされています。大豆イソフラボンは女性ホルモンと同様の働きをするため、過剰摂取で男女共に健康への悪影響が考えられており、上限値は次のように細かく分けられます。

そこで、今回の健康影響評価においては、特定保健用食品として摂取する分も含めて、本書の 3.2 平成 14 年国民栄養調査に基づく大豆イソフラボン摂取量(試算)において明らかになった 95 パーセンタイル値 64~76 ㎎/日(閉経前女性:64 ㎎/日、閉経後女性:74 ㎎/日、男性:76 ㎎/日)を食経験に基づく現時点におけるヒトの安全な大豆イソフラボンの一日上限摂取目安量とする。

出典:内閣府 食品安全委員会『(PDF)大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方』

このように、大豆イソフラボンの摂取目安量は、月経の有無や性別によって異なっています。上限値を超えて摂取を続けると、思わぬ副作用に繋がる危険性もあるので、この摂取目安量を守るようにしましょう。

摂取目安量を超えた場合の副作用について

イソフラボンの1日の摂取目安量についてご紹介しましたが、この目安よりも超過して摂取し続けた場合、どのような副作用が現れるのでしょうか。
副作用は性別や超過した量によって異なりますが、男性では女性化乳房が現れたという報告もなされています。このときのイソフラボン摂取量は、1日に数百mgとされているので、かなりの摂取量であったと推測されます。
一方で、女性に現れた副作用は、月経周期の延長、子宮内膜増殖症発症率の増加などです。これらの例では閉経前の女性が、1日あたり150mgのイソフラボンを摂取した場合に見られました。
ただし、イソフラボンの副作用が現れるためには、年単位で長期的な過剰摂取をすることが条件となっているため、たまたま1日だけ過剰摂取してしまったというくらいでは、副作用の危険性はないと言えるでしょう。

1日摂取目安量の上乗せ値について

食品安全委員会によって定められたイソフラボンの摂取目安量ですが、特定機能性食品については、1日あたり約30mgまで上乗せできるとされています。
閉経前の女性はイソフラボンの摂取によって月経周期が変化するため、月経周期と血液中のエラストラジオールという女性ホルモンの様子を検証した結果、1日約30mgまでが健康に影響がない上乗せ値だとされました。
男性や閉経後の女性に対して検証実験は行われていませんが、イソフラボンからの影響が閉経前の女性と異なるとは考えられないという理由から、同じく1日あたり30mgという上乗せ値になっています。ただし、この上乗せ値は乳幼児には適用されません。

食品から摂取する場合について

イソフラボンを大豆などの食品から摂取しようとした場合、一体どのくらいの食事量が必要なのでしょうか。大豆の種類によって含まれるイソフラボンの量は異なりますが、平均的なイソフラボン含有量と、1日に摂取すべき食事の量は次のようになります。

食品名 平均含有量(100gあたり) 食事量目安
64mgの場合 75mgの場合
きなこ 266.2mg 24g 28.5g
大豆 140.4mg 45.8g 53.4g
納豆 73.5mg 87.7g 102g
味噌 49.7mg 129.8g 151.5g
豆腐 20.3mg 322.5g 370.3g

出典:内閣府 食品安全委員会『大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A』問6

食事の目安量は、閉経前の女性の摂取目安量である64mgと、閉経後の女性と男性の摂取目安量の中間である75mgの2種類で記載しています。
イソフラボン含有量が多い食品で算出してみましたが、最も摂取に向いているのは、納豆、きなこ、大豆、豆腐の4つ。
味噌は塩分が多いため、目安量で摂取しようとすると脳梗塞予防に影響が出ると考えられます。豆腐は低カロリーで健康的な食品ですが、300gは一丁となるため、加工をして飽きないように食べるのがコツです。
きなこはイソフラボン含有量がかなり多いので少しの摂取で目安量を達成できますが、肥満のリスクを避けるために、砂糖の入っていないものを食べるようにしてください。

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献

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