高血圧

生活習慣病のひとつである高血圧は多くの方に該当する一般的な病ですが、恐ろしい脳梗塞へとつながってしまう可能性は否定できません。

ここでは、高血圧の特徴や原因、脳梗塞との関係について学びましょう。

高血圧の原因や特徴

高血圧を起こしてしまう原因として考えられるのは、元々の体質と生活習慣です。両親とも高血圧である人は、遺伝的に高血圧になりやすい傾向がありますし、遺伝的に問題がない方でも、生活習慣によって血圧が上がりやすくなることがあります。ストレスが多い生活や塩分と脂肪分の多い食事、運動不足、血管の老化などが要因となって、血圧を上げてしまうのです。

高血圧そのものは、それほど自覚症状がありませんから、そのまま放置している方も多いのが事実。しかし、高血圧の恐ろしさは、動脈硬化などほかの重大な病気を引き起こしてしまう可能性が高い点にあります。

血圧が高めの血管は、老化が進んで傷ついていたり、血管内部にコレステロールなどの脂質が溜まって血流を阻害してしまうケースが多く、これを動脈硬化と呼んでいます。高血圧と診断されたら、まずは動脈硬化が起こっていないか注意する必要があります。

高血圧と脳梗塞の関係

血圧は心臓の血液が、血管の内壁に加える圧力です。高血圧だと血管や心臓に無理な力が加わって、血管の壁が傷んでいき「動脈硬化」が徐々に進行していきます。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞という脳梗塞は、日本人の脳梗塞の約半数を占めていると言われています。比較的軽い症状の場合が多いですが、再発することで、認知症やパーキンソン症候群を引き起こす可能性もあります。脳梗塞の中でも、特に高血圧との関連性が強いと言われているのがラクナ梗塞です。

ラクナ梗塞の特徴は、脳に通っている細い動脈が詰まり、15mm以下の小さな梗塞が起きることです。脳の血管が高血圧などによってダメージを受けると、「微小動脈瘤」と呼ばれる小さなコブができ、血管壁が脆くなって血栓が作られます。微小動脈瘤の部分で血栓が詰まるとラクナ梗塞になり、脆くなった血管が切れれば脳出血となるのです。

梗塞が非常に小さい場合は、無症状のラクナ梗塞となる場合もあります。その場合、無症状のまま繰り返し再発し、周囲の人も気が付かないまま認知症や高次脳機能障害を引き起こす可能性もあるようです。ですが、例え無症状であっても、MRI検査を受ければ容易に発見に至ります。

アテローム血栓性脳梗塞

アテローム血栓性脳梗塞は、首や頭部の太い動脈が動脈硬化を起こすことが根本的な原因です。日本人の脳梗塞では、約20%がアテローム血栓性脳梗塞だとされています。発症時の症状としては、手足の片麻痺、感覚障害、失語、失認などの他、心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症の合併なども見られます。

「アテローム」というのは、動脈の「アテローム硬化」のことを指しています。アテローム硬化とは、動脈が固くなった状態で、血管内部にコレステロールなどの脂肪が蓄積され、血管が狭くなった状態のことです。

狭くなった血管内に血栓が作られ、完全に血流が遮断されてしまった場合や、はがれて血流に乗った血栓が他の部分で詰まることで、アテローム血栓性脳梗塞が引き起こされます。

アテローム血栓性脳梗塞は、脂質異常症、糖尿病、高血圧などの状態の方で発症率が上がるため、生活習慣や食生活の改善によって、発症率を低下させることが可能です。

心原性脳塞栓症

心原性脳塞栓症は、脳ではなく心臓部分でできた血栓が原因となる脳梗塞です。日本人の脳梗塞の20~25%程度を占めており、脳梗塞の症状はかなり重くなる場合が多く、後遺症が残る可能性も高いと言われています。

「心原性」というのは、「心臓が原因の」という意味を持っており、その名の通り心臓病が原因となります。心臓に不調を抱えていると、不整脈や心機能の停滞などで、心臓部分の血流がスムーズではなくなります。それが原因で、心臓周辺の血管で血栓が作られるのです。

心臓部分で作られた血栓は、血液が流れる勢いに乗って、はがれて別の場所に行きつくことがあります。その血栓が脳に運ばれ、脳の動脈を塞いでしまった場合に発症するのが、心原性塞栓症です。

心原性脳塞栓症の原因となりやすい心疾患は、心房細動、心筋梗塞、リウマチ性心臓病、心筋症などが挙げられます。また、高血圧だと心筋の細胞に大きな負担をかけるため、心疾患を引き起こしやすくなります。

高血圧と診断されたら…効果的な対策とは

健康診断などで血圧が高めであることを指摘されたら、血圧をコントロールして恐ろしい合併症を防ぐ対策を考えなければなりません。

低リスクまたは中等度の高血圧であれば、まずは食事の内容を見直したり、禁煙や習慣的な運動を取り入れたりして生活改善を行い、血圧が下がるかどうかを確認します。

1ヶ月〜3ヶ月程度経過しても血圧が下がらないようなら、降圧薬で治療を行います。重度の高血圧なら、すぐに降圧薬を処方されます。

生活習慣の見直し

高血圧は脳梗塞に繋がる危険な状態ですが、生活習慣の見直しを行うだけで、比較的簡単に改善できる可能性もあります。まず見直しを行っていきたい部分は、次のような項目です。

  • 塩分を控えた食生活をする
  • 肥満気味の場合は減量をする
  • 毎日の適度な運動を心がける
  • 飲酒は適量に留める ・禁煙

高血圧の改善で一番大切なことが、塩分を減らすことです。塩分を摂りすぎると血中の塩分濃度が高くなり、それを薄めるために血液の中の水分量が増え、血管に負担がかかってしまいます。

そして、肥満気味の場合は、さらに脂肪組織から血圧上昇を促す成分が分泌されているので、内臓脂肪を中心に減少を行うだけで、血圧が安定することもあります。

肥満の解消に欠かせないのが運動ですが、同時に血行を改善して血圧を下げる効果も期待できます。ただし、運動は血圧を上昇させる効果もあるので、軽い運動から無理なく始めましょう。

飲酒は1日に日本酒1合程度(純アルコール20mg)なら、血圧を低下させますが、過度の飲酒は一気に血圧を上昇させます。喫煙は高血圧にプラスに働くことはないので、出来るだけ禁煙をしてください。

投薬

高血圧治療で用いられる降圧薬には様々なものがありますが、大きく分けて6種類に分類されます。

  • カルシウム拮抗薬

血圧を下げる効果が確実な治療薬です。血管に入るカルシウムを減らし、血管を拡張させます。

  • アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)

副作用が少ないタイプの治療薬です。アンデオテンシンというホルモンの働きを抑えて降圧させます。

  • アンジオテンシン変換酵素阻害薬

副作用として咳が出るようになります。アンデオテンシン自体を減らす治療薬です。

  • 利尿剤

摂取した水分と塩分を排出させることで降圧作用をもたらします。他の降圧薬をサポートする作用も。

  • 遮断薬

血管収縮作用をもたらす交感神経の心臓への働きを抑え、血圧を下降させます。不整脈、喘息悪化などの副作用があります。

  • 遮断薬

交感神経の血管への働きを抑えて、血圧を下降させます。起立性低血圧の副作用があります。

一般的には、これらの内のどれかを処方して、効果や副作用を見ながら、少しずつ量を増やしていきます。治療薬には降圧作用がありますが、生活習慣を改善して高血圧の原因を解消していかなければ、ずっと降圧薬を飲み続けることになってしまいます。