脳梗塞の後遺症にはどのようなものがある?

脳梗塞を含む脳卒中の中で、最も心配になるのは後遺症のことでしょう。脳性麻痺や言語障害、認知障害など、日常生活に支障が出る後遺症が多いと言われています。日常生活に戻れるまで入院できるのか?再発を予防するには、どんなことに気をつければ良いのか?など、脳梗塞の後遺症について整理していきましょう。

脳梗塞や脳出血など、脳卒中は重い後遺症が残る

日常生活に支障をきたすほどの後遺症が多い脳卒中。脳梗塞も例外ではありません。

脳梗塞の主な後遺症には、

  • 脳性麻痺…脳の細胞や組織が影響を受けてしまい、体に麻痺が起こってしまいます。
  • 言語障害…言葉を理解できなくなり、意思疎通が難しくなります。文字が書けなくなる方もいる後遺症です。
  • 認知障害…空間を認識できない、名前を思い出せないなど、認知症によく似た症状が現れます。

などがあり、この3つがとくに重い後遺症です。

しかし、リハビリを続けることによって回復する可能性もあります。

重い後遺症があっても入院できる期間は限られる

急性期の治療が終わった後は、日常生活に戻るためのリハビリが始まります。ただ、重い後遺症があっても、入院できる期間は限られているのです。

急性期として入院できるのは約2週間、本格的なリハビリを始める回復期の入院は最大6ヶ月と決まっています。また、後遺症の度合いや病院の方針によっても期間が異なる場合も。急性期の治療後は別の病院や施設に移ることがあります。早い段階で医師に相談したほうが良いでしょう。

急性期では、寝返りをうつ・座る・手足の関節を動かすなど、無理のない範囲でリハビリを行います。

回復期で受けるのは、後遺症にあわせた専門的なリハビリです。理学療法士や作業療法師による運動機能の回復、言語聴覚士による嚥下・言語機能の回復などを目指して行われます。

急性期・回復期のリハビリ期間を終えた後は維持期に入り、自宅や専用の設備があるクリニックでリハビリを続けていくことになるのです。

脳梗塞の後遺症「麻痺」「痙縮」「拘縮」

麻痺

手足に力が入らなくなる後遺症です。片麻痺は障害を受けた部分の反対側の手足に起こります。

歩行が難しくなる、転びやすくなるといった症状をはじめ、文字を書くのが難しくなることも。

痙縮(けいしゅく)

筋肉が緊張してしまい、手足の強張りや突っ張りが起こります。「こうしたい」と考えている動きを妨げてしまう後遺症です。片麻痺と一緒に現れることがあります。

主な症状は、手首や肘が曲がってしまうことや、足の筋肉が突っ張ってしまうこと。衣服の着脱に時間がかかったり歩きにくさを感じたりします。

拘縮(こうしゅく)

長時間、手足を動かしていないことで関節が固まってしまう後遺症です。痙縮で手足が突っ張って可動域が制限され、関節を動かせなくなると拘縮が起こります。

これまで、麻痺の改善は約半年で限界に達してしまうことがほとんどでした。しかし、磁気刺激や電気刺激、細胞移植、痙縮治療などの新しいリハビリ・治療方法によって、さらなる改善が見込めるようになっています。

つらい痛みやしびれ

脳卒中の後遺症に関する悩みの中で、訴えが最も多いのは「痛み」と「しびれ」です。

痛みは外部からの有害な刺激や、体内のどこかで炎症や圧迫が起こっている異常事態の警告です。痛覚は生きていくうえで重要な機能ですが、長期間続くと精神的な痛みにもなってしまいます。

しびれは、痛みと同じように、神経経路や感覚中枢に何かしらの異常事態が発生していることを教えてくれているのです。

ひとくちに「しびれ」と言っても、痛みや温度に対する感覚が麻痺してしまう感覚鈍麻(どんま)・感覚消失や、ビリビリ感のある異常感覚に分かれています。

脳卒中の後遺症としては、どのタイプのしびれも出現することが確認されているようです。

後遺症と向き合い、再発を予防することが大切

脳梗塞を含む脳卒中は、心筋梗塞といった虚血性心疾患と比べても再発リスクが高い病気です。脳梗塞の年間再発率は約5%と言われています。

しかし、再発を恐れて日々を過ごすよりも、1つでも気をつけられることを見つけて行動することが大切です。脳卒中の危険因子である生活習慣病の予防に努めたり、後遺症を改善するためにリハビリに取り組んだりしてみましょう。

患者さんひとりでは難しい部分もあるため、家族と一緒に再発予防を心がけてくださいね。

食事でできる脳梗塞の再発予防

脳卒中の大きな原因は高血圧です。血圧を上げてしまう食事や調味料はできるだけ避けましょう。

血管壁に圧力をかけてしまう高血圧が続くと血管壁が厚みを増し、動脈硬化を引き起こします。すると、血管が詰まりやすくなるのです。

それを防ぐためにも、まず塩分の摂取量を減らしてください。日本人が1日で摂っている塩分は14gと言われていますが、高血圧対策をするなら10g以下に抑えなければなりません。

必然的に塩分量が多くなってしまう汁物や漬物は、食べる回数・量を減らしましょう。食事から塩分を抜くと全体的に薄味になりますが、レモン汁やお酢、香辛料などを上手に活用するとメニューの幅も広がります。ただし、薄味だからといって食べ過ぎは厳禁です。

後遺症のリハビリに取り組んでいる際も、体づくりに必要な栄養素をしっかり摂れるよう、食事管理を大切にしてください。

嚥下障害の場合でも解決策はある

嚥下障害を抱えている人の原因疾患のうち、約40%が脳卒中にあると言われています。脳卒中の急性期では、患者の約30%に誤嚥があり、回復期・維持期まで誤嚥が残ってしまう患者は全体の約5%と確認されているのです。

日本では年間40万人近くの人が脳卒中を起こしていると推計され、多くの人が嚥下障害と向き合いながら生活しているのがわかります。

「回復が難しい」と捉えている方も多いかもしれませんが、嚥下障害にはいくつかの治療方法があります。

  • 経管栄養法…重い嚥下障害を抱え、口から水や食事を摂ることができない場合の治療方法。
  • 間接的訓練…食べ物は使わずに、関節の可動域や筋力アップのための訓練をします。食べ物を使わないため安全性が高く、家庭でも実施できる訓練です。
  • 直接的訓練…実際に食べ物を嚥下させる訓練。最初は嚥下しやすい食べ物から進めます。
  • 輪状咽頭筋切断術…食道の入り口が開かない時に検討する手術です。
  • 喉頭挙上術…嚥下運動が難しい場合に検討される手術です。

家族の協力は必要不可欠ですが、嚥下障害でも解決策はあります。医師と相談しながら、この先も満足に栄養を摂取できる方法を探ってみましょう。

退院後の生活環境を整える

急性期・回復期のリハビリを終えると、維持期に入ります。いよいよ自宅に戻れることになりますが、維持期のリハビリは自宅や専用の病院・施設でも続くケースがほとんど。

そのため、患者がリハビリしやすいよう生活環境を整えておくことが大切です。

トイレであれば便器の両サイドに手すりを設け、玄関口では踏み台や手すりを設置すると良いでしょう。患者自身の生活範囲を広げることができ、自立した生活を送れるようになるのです。

生活環境を整えることは、後遺症克服に対して患者や家族を前向きにさせます。できることから始めていきましょう。

脳梗塞の予後に懸念される後遺症とリハビリ

リハビリについて脳梗塞が発症したら、後遺症の軽重を問わず速やかにリハビリテーションを行うことが大事。

脳梗塞のリハビリは機能の回復だけでなく、再発の防止にも繋がっているのです。

麻痺

脳梗塞の後遺症の中でも代表的なものが「片麻痺」「半身麻痺」。身体の片側に麻痺が発生する症状で、脳梗塞ではとくに多く見られます。

■リハビリ
マッサージや外部から身体を動かすなどで、症状の軽減・回復を図ります。とくに、関節が曲がったまま動かせなくなる「拘縮」を防ぐことが重要。拘縮が起きると機能回復や日常生活にも大きな影響をきたすため、早い段階からリハビリを始める必要があります。

脳梗塞の後遺症「麻痺」について詳しく知る >

言語障害


脳がダメージを受けることで、言葉が出ない・ろれつが回らないなどの言語障害が起こることもあります。会話は理解できるがうまく話せない構音障害と、会話が成立しなくなる失語症の2タイプに分かれます。

■リハビリ
話す・聞く・読む・書くなどの機能がどれだけ残っているかをチェックし、患者の状態に応じたリハビリを行います。言語聴覚士による専門的な訓練以外にも、家族による日常的なサポートが必要です。また、摂食・嚥下障害などのリハビリも、言語聴覚療法として行われます。

脳梗塞の後遺症「言語障害」について詳しく知る >

記憶障害・高次脳機能障害

脳がダメージを負うことにより、過去の経験や出来事を思い出せなくなったり、新しい情報を覚えられなくなる状態。記憶する能力が大幅に減衰したり、直前の記憶が消失するなどの症状も見られます。

■リハビリ
言語聴覚士による言語聴覚療法が中心。残された言語能力のうち比較的ダメージが軽い側面を利用し、意思の疎通・会話の成立などの機能を回復させていきます。リハビリの進行具合は人によって異なり、言葉がうまく話せない歯がゆさから患者自身のストレスも多くなります。家族や支援者のサポートが何より大切です。

脳梗塞の後遺症「記憶障害・高次脳機能障害」について詳しく知る >

しびれ

脳梗塞により脳やその周辺の神経、間隔中枢などにダメージが加わると、体にはとくに異常がないのにも関わらず、常に手足などへしびれを感じるようになるケースがあります。後遺症として現れるしびれや痛みには、 感覚の中枢にダメージを受けたことによる中枢性の疼痛やしびれと、麻痺に関連した末梢性の疼痛およびしびれがあります。

■リハビリ
末梢性の痛みやしびれがあるケースでは、手足のリハビリと一緒に痛みのケアも行います。通常の痛み止めなどは効果がなく、抗うつ剤や抗けいれん薬などが効く場合があるので、いくつかの薬を試行錯誤しながら、しびれの様子を見ていきます。

脳梗塞の後遺症「しびれ」について詳しく知る >

めまい

脳梗塞の後遺症としてもめまいの症状が残ることがあります。これは脳への血流が不足することで脳貧血を起こしてしまって起こるめまいで、フワフワとしてふらつく浮動性のめまいと、グルグルと目が回る回転性のめまいの2種類があると言われています。

■リハビリ
体を平行に保つリハビリなどを行います。立ったり座ったり、ゆっくりと歩行するなどのリハビリを繰り返すことで、徐々に体が平衡感覚を取り戻していき、めまいやふらつきが改善されていくことが多いそうです。

脳梗塞の後遺症「めまい」について詳しく知る >

廃用性症候群


廃用性症候群は、脳梗塞に限らず何らかの疾患やケガなどで体の機能が低下してしまい、動かさない状態が長く続いた場合に起こる症状です。体や脳を働かせない期間が長引くことで、体の機能だけでなく、自律神経や精神面でも障害が現れることがあります。

■リハビリ
脳梗塞の急性期治療が終わり次第、体を動かすリハビリを開始して、できるだけ体の機能を衰えさせないように促すことが大切。発症直後は立って歩くことができなくても、関節を拘縮させないように手足の曲げ伸ばしや回転を繰り返したり、体を起こして座る姿勢を続けるだけでも効果的です。

脳梗塞の後遺症「廃用性症候群」について詳しく知る >

脳梗塞の再発リスク

再発防止のポイント脳梗塞は再発しやすい病気の1つ。年間の再発率は5%と言われており、1年間で20人に1人の患者が再発しているのです。再発が起こりやすいのは、発症してから半年~1年以内とされています。

なぜ脳梗塞は再発しやすいのか。それは、脳梗塞患者のほとんどが発症の引き金となる危険因子を持っているからです。

危険因子には高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・飲酒・肥満などがあり、これらのリスクを日常生活の改善で減らしていくことが重要です。

再発を防ぐためには、日常生活の改善と共に、指示された薬の服用・リハビリテーションの継続も必要です。適切な薬物治療を行うことで、再発の危険性が30~70%減らせるとも言われています。症状が安定しているからと油断しないようにしましょう。

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献