糖尿病

高血圧と並んで多いと言われている糖尿病。糖尿病の原因や特徴、脳梗塞との関係について考えてみましょう。

糖尿病の原因や特徴

糖尿病は、血液中の糖分の値が高くなってしまう病気で、血糖値を下げる働きをするインスリンの分泌量が減ったり、働きが悪くなることで起こります。

インスリンはすい臓の一部で作られるため、すい臓の機能が元々弱い方などは、お子さんや若い人でも糖尿病を発症することがあります。

また、過食や運動不足、肥満などを原因として、中高年以降に発症することが多く、このケースは生活習慣病として知られています。

糖尿病は、初期の段階ではそれほど自覚症状がありませんが、中等度以上になると、喉の渇きや尿の量の増加、疲れやすさや体重の減少などの症状が表れることがあります。

糖尿病の「第4の合併症」が脳梗塞

脳梗塞は、糖尿病の「第4の合併症」といわれています。

脳梗塞とは、脳の血管の一部が狭くなったり血栓が詰まったりして、血液が流れにくくなって脳機能にダメージを与える病気です。死亡者数は年間7万人にものぼるほど。死を免れても運動や言語の機能に障害が残りやすくなります。

欧米の研究者が近年の日本人を対象に調査したところ、糖尿病の人の脳梗塞のリスクが高いことが判明しました。正常な血糖値の人の脳梗塞発症リスクに対して、糖尿病の人のリスクは男性で2.2くらい、女性だと3.5くらいまで一気に上がります。

脳梗塞については、普段からの予防を心がけておきましょう。糖尿病の人はとくに血糖値を徹底管理し、悪化させないことが大事。糖尿病を放っておくと「糖尿病性網膜症」「腎症」「神経障害」といった3大合併症を起こしやすくなります。

3大合併症が目や腎臓、手足などの細い血管で発症して次第に進行するのに対して、脳梗塞の場合は脳の細い血管だけでなく、太い血管で突然発症します。最悪、命にかかわることも。決して油断できません。

動脈硬化が進行して発作が起こる

糖尿病の人はなぜ、脳梗塞などの病気になりやすいのでしょうか。脳梗塞も心筋梗塞も、原因は動脈硬化です。動脈硬化を起こすと血液が流れにくくなって発症する病気で、糖尿病はその動脈硬化の進行を早めてしまいます。

動脈硬化が進行すると血管のスペースがなくなり、血栓ができやすくなります。血栓で血流がせき止められてしまうと、その先の細胞には酸素や栄養が届きません。細胞の末路は「死滅」。これが「梗塞」といわれます。
脳や心臓の細胞は再生しません。梗塞のため、死滅した細胞が担ってきた働きは復活せず、後遺症だけが残ってしまいます。

糖尿病になると動脈硬化が起きやすい

動脈の断面は、内膜と中膜、外膜の3層です。動脈硬化が進む原因は、大量のコレステロールです。

大量のコレステロールが内膜に入り込み、本来は水溶性のたんぱく質がコレステロールを取り込んで「リポたんぱく」へとかたちを変えます。酸化したりブドウ糖が結合したりしたリポたんぱくは、内膜に蓄積されプラーク(粥腫=じゅくしゅ)と呼ばれるかたまりを形成。糖尿病があると、コレステロールが高くなくても動脈硬化が進行していくのです。

最近では糖尿病ほど血糖値が高くない「予備群」段階でも、動脈硬化が進行し始めることが、注目を集めています。

恐怖!動脈硬化は自覚症状なしに進行する…

動脈硬化が起きても、血管断面積の100%近くをふさいでしまうまで、自覚症状がありません。しかも血管内にできるプラークは、あるレベルの大きさに達すると徐々には大きくならないのです。

突然破裂して一気に血栓をつくってしまいます。その結果、血管内部をふさぐので、健康な人が突然、脳梗塞や心筋梗塞の発作に見舞われてしまうのは、自覚症状がないからです。

脳梗塞と糖尿病の関係性についての研究

欧米で行われた脳梗塞と糖尿病の関係性について、もう少し詳しくご紹介しましょう。この研究で分かったことは、糖尿病を患っていると、『特に』脳梗塞のリスクが高まるということです。

近年、日本人を対象とした調査・研究が進展した結果、脳卒中のなかでもとくに脳梗塞のリスクが高いことが判明したのです。血糖値が正常な人の脳梗塞の発症リスクを1とした場合、糖尿病の人のリスクは男性で2.22、女性では3.63にもなります(※2)。

出典:オムロン『vol.126 糖尿病の第4の合併症「脳梗塞」に注意』

脳卒中の中には、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞が含まれていますが、この3つの中でも、脳梗塞のリスクが際立って高いと結果が出たのです。

脳梗塞で発症するリスクの高い脳梗塞は?

糖尿病では脳梗塞のリスクのみが特に高まりますが、それは脳梗塞全般に言えること。つまり、ラクナ梗塞、側線性脳梗塞、アテローム性脳梗塞の3種類で、いずれも発症リスクが上昇するということです。

糖尿病と脳梗塞の病型別の検討により、微小血管障害としてのラクナ梗塞発症につながるとともに、大血管障害として塞栓性脳梗塞、アテローム性脳梗塞のリスクファクターとなることが示されました。

出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター『糖尿病と脳卒中の病型との関連について』

いずれの種類も、即、命に関わる可能性がある脳梗塞。そんな恐ろしい疾患を予防するには、糖尿病を予防・改善させていくことがとても重要です。

食事制限

糖尿病を改善していくために、最も大切なポイントと言えるのが食事制限です。特に気を付けたいことは、次のようになります。

  • 塩分、脂肪分を控えめにする
  • 摂取カロリーを適正に保つ
  • 野菜や海藻を積極的に摂取する
  • 栄養バランスの良い食事をする
  • 規則正しく、腹八分目の食事

「食事制限」といっても、特に食べてはいけないものはありません。肉の脂身や油ものなどの脂肪分、塩分の強い漬物、糖分がたっぷり入ったお菓子などは控えめにして、ビタミンとミネラルを多く含んだ野菜や海藻を多く摂るようにしましょう。

満足感を得るために、ゆっくりと食べる、よく噛んで食べるなど、食べ方にも工夫を施してください。また、油ものやお菓子なども時折食べれば、ストレスを溜めずに食事制限を続けていけます。

摂取カロリーの目安

糖尿病の食事では、摂取カロリーの計算がとても重要です。摂取できるカロリーは、その人の身長、体重、活動量によって求められ、計算式としては次のようになります。

身長(m) × 身長(m) × 22 × 身体活動量 = 摂取エネルギー量

身体活動量は、あまり動かない方であれば「25~30」、普通の立ち仕事をする方であれば「30~35」、重労働をする方なら「35」を設定します。

運動

運動をすることは糖尿病改善だけでなく、肥満予防、循環器疾患・がん・生活習慣病の予防などにも役立ちます。運動をすると、体内のブドウ糖が細胞に取り込まれていき、インスリンの働きが上昇。その結果として、血糖値が低下するため、糖尿病の方には運動が欠かせません。

糖尿病の方におすすめしたい運動は、次の2種類です。

  • 有酸素運動

少し辛いと感じる程度の有酸素運動が理想的だと言われています。例としては、ウォーキング、ジョギング、水泳などの全身運動が挙げられ、ウォーキングなら1回15~30分程度を1日2回行うと効果的です。血糖コントロールの様子を見ながら、運動強度を調節しましょう。

  • 筋力トレーニング

脚、腰、背中などの筋肉を鍛えるトレーニングをします。週に2~3回程度が効果的で、1セット10回を目安にしてください。例えば、壁に手をついてかかとを上げ下げするふくらはぎのトレーニング、後ろで両手を組んで体を反らせるような背中のトレーニングなどがあります。

ただし、急に激しい運動をし始めると、体を傷める、血圧が上昇しすぎるなどの可能性もあります。有酸素運動の場合は、事前に準備体操をしてから行い、筋力トレーニングは担当医に相談してから始めるようにしましょう。

投薬

糖尿病で処方されるのは、血糖値を下げるための治療薬です。治療薬は、大きく分けて内服薬と注射薬がありますが、それぞれ作用機序が異なった治療薬が用意されているので、体の状態に合わせて処方されるでしょう。

内服薬

糖尿病の内服薬は大きく分けて3種類があり、それぞれで、血糖値を下げるための方法が異なっています。

・インスリンの分泌を促進させる内服薬 ・インスリンの効果を出しやすくする内服薬 ・糖分の吸収を抑え、排出を促進させる内服薬

これらの内服薬を使用する際には、低血糖になる可能性もあるため、低血糖の症状や改善などについても知っておく必要があります。飴を1個だけ舐めるという方法は簡単な解消法なので、常に飴を持ち歩くのも良いでしょう。

注射薬

注射薬も種類が分かれており、大きく分けて次の2種類が存在します。こちらも、体内のインスリンを増加させるための方法が異なっている2種類です。

・インスリンを分泌しやすくするGLP-1受容体作動薬 ・インスリンを直接補充するインスリン製剤

GLP-1受容体作動薬は、使用する製剤によって1日1回のタイプと、1週間に1回のタイプに分かれます。インスリン製剤は6種類が存在しており、効き目の早さや持続力が異なるため、医師に確認した上で使用してください。

糖尿病と診断されたら…効果的な対策とは

生活習慣によって血糖値が上っていると診断されたら、まずは食事の内容に気を付けたり運動を行って生活改善を行いましょう。

食事については、塩分や脂肪分の多い食事を避け、摂取カロリーを制限することが基本で、ビタミンやミネラルを多く含む野菜や海藻を摂るように心がけます。運動を行うときは、ウォーキングなどの軽い有酸素運動から始めて、血糖コントロールの様子を見ながら負荷を上げていくようにします。

運動や食事療法でも血糖値が改善しない場合は、インスリン注射や内服薬による投薬治療を受けることになります。