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DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)の脳梗塞予防効果をチェック

DHA・EPAといえば青魚を思い出す人が多いと思いますが、最近では中高年向けのサプリとして注目されている成分です。
EPAは血液を健康に保ち、動脈硬化や脳梗塞などを予防する効果が期待できます。DHAは脳や網膜といった神経系に豊富に含まれる成分。そのほかにもDHA・EPAがもたらす効果について紹介していきましょう。

DHA・EPAとはどのような成分?

DHAは「ドコサヘキサエン酸」の略称で、体内でほとんど作ることができない必須脂肪酸の一種。いわしやサバといった青魚に多く含まれています。

EPAは「エイコサペンタエン酸」の略称で、DHAと同様に青魚に多く含まれている成分です。鮮度がよくて脂ののった魚には、よりたくさんのEPAが含有。魚の油にはDHA・EPAの両方が含まれています。
研究面からみると、EPAはほぼ100%濃度の医薬品で研究が重ねられてきたので、人間が摂取するとどうなるのかはっきりとわかります。

一方DHAは100%濃度のものを人間が食べたという研究がほとんどありません。そのため、EPAは血液や血管の健康をもたらす効果があるとわかっていますが、DHAは脳や神経に存在するということしか言えないのが現状です。
今の時点では、からだができあがった成人にはEPA、脳が形成される成長期の幼児にはDHAという勧め方になっています。

DHA・EPAの効果効能一覧

DHAと聞くと「記憶力アップや学習に効果的」といったイメージを持つ方も多いでしょう。
1989年にイギリスのマイケル・クロフォード教授が「日本人のこどもの知能指数が高い理由は、昔から魚をたくさん食べてきたから」という発表をしたことがキッカケで、学習に効果的というイメージがつくように。マイケル・クロフォード教授の発表以来、DHAの注目度は一気に高まりました。
各国で臨床試験が繰り返し行われ、さまざまな効果が明らかに。今では中性脂肪やコレステロールの低下に加え、アトピーやアレルギーにも効果があることが認められている成分です。

一方EPAには血栓をつくらせない働きがあり、心筋梗塞や脳梗塞など生活習慣病の予防・改善効果があります。善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを減少させる作用もあるので、血液をサラサラにしてくれる効果も。
EPAは医療の分野でも利用されており、アミノ酸の一種であるアルギニンと一緒に投与することで、術後の傷を治す機能が促進するという報告もあがっています。

中性脂肪低下作用

必須脂肪酸のEPA・DHAには中性脂肪値を下げる働きがあります。食事で摂取した余分なエネルギーが肝臓で中性脂肪に合成されて、肝臓や脂肪細胞が過剰に蓄積。
中性脂肪は生命維持に欠かせないエネルギー源ですが、増えすぎてしまうと血液中の善玉コレステロールを減らしてしまいます。これを防いでくれるのがEPAやDHAです。

ではなぜEPA・DHAを摂取することで、中性脂肪を減らせるのでしょうか?それは摂取することで得られる3つの働きに秘密があります。

1つめの作用は、肝臓内で脂質に働きかけることで脂肪になるのを抑制。2つめは脂肪の成分である「脂肪酸」を分解します。3つめが、血管内の中性脂肪の分解効果を向上させる働きです。EPAを摂取すれば、これらの作用が相乗的に働くことで中性脂肪を効果的に減少させてくれます。

心筋梗塞・脳梗塞予防効果

EPAは「中性脂肪を低下」「動脈硬化を予防」「血液凝固を抑制」する効果があるため、心筋梗塞と脳梗塞の予防に繋がります。日本で実施されたEPAの長期摂取試験の結果が2005年に心臓病大国のアメリカで発表されました。

血液の総コレステロール値が250mg/dL以上の数値を示す高脂血症の人で、コレステロール下降剤を飲んでいる約2万人を対象に実験を行ないました。
半数の約1万人にはEPAを毎日継続して薬と一緒に併用してもらい、EPAを併用しない半数との心臓病の発生率の違いを5年間追跡。結果はコレステロール下降剤のみを飲んでいた人と比較して心臓病の発生率が19%も低減しました。

また、カナダ北部に氷雪地帯に住むイヌイット族は、主食であるアザラシに青魚に由来するEPAが含まれているため、心筋梗塞の死亡率が低いのがわかっています。

動脈硬化を防ぐ作用

血管年齢を若く保ち動脈硬化を予防してくれるEPA。血管内にはコレステロールや中性脂肪などの脂質を複合体粒子であるリポタンパクが血管内に流れています。それらを老廃物を処理するマクロファージ(貪食細胞)という細胞が処理してくれるのですが、同時に老廃物も蓄積。老廃物のある部分が盛り上がり血管を狭くします。これが動脈硬化の原因です。

欧米化にともない肉中心の食事が増え、日本人のEPA不足が深刻化しています。現に「動脈硬化性疾患」の死亡率(10万人あたり)は1950年に9.9%だったのに対し、1980年には42%まで上昇しています。
年々動脈硬化で血管が詰まるリスクが上昇しており、心臓病や脳梗塞で命を落とす人が増えているのは確かです。EPAを積極的に摂取することで、動脈硬化の予防に繋がります。

コレステロール低下作用

EPAには、血液中に存在する血中脂質(コレステロールや中性脂肪)低下作用が認められています。また血液に含まれる血小板という細胞成分の一種の働きを抑制してくれる効果も。血小板には血管が損傷した際に修復するという重要な役割を持っています。

一方でコレステロールや糖と結びつくことで性質が変化し、血管内に血栓を作り出してしまうとのこと。血管内に血栓ができやすい状態になると、心筋梗塞や脳梗塞に繋がります。

EPAを積極的に摂取すれば、血液中のコレステロールを低下させ、血小板を抑制することで血液を健康に保つことができるのです。体質改善をするためには毎日の摂取が重要なので、継続して摂れるように心がけましょう。

組み合わせの良い他の栄養素

フコキサンチン

「フコキサンチン」は、海藻の中に多く含まれる栄養素です。脂肪をエネルギーに変えるために必要なたんぱく質の働きをサポートすることで、内臓脂肪を減少させる効果があります。
DHAやEPAには中性脂質の濃度を低くする働きがあるため、相互に作用しあって、脂肪を減らす効果が増幅する組み合わせです。

また、フコキサンチンにはDHAの生成を促進させる働きもあるため、DHAの効果をより高めるためにも役立ちます。
DHAとEPA、フコキサンチンは、いずれも脂肪の量を減少させて肥満やメタボリックシンドロームを予防し、脳梗塞の予防へとつなげてくれるでしょう。

セサミン

「セサミン」はごまに含まれている栄養素で、肝臓の脂肪代謝能力を高め、体の中の脂肪量を減らしてくれます。セサミンとDHA・EPAを同時に摂取すると、セサミンの脂質代謝効果が高まるとされているため、DHA・EPAとの相性は抜群です。

また、セサミンには高血圧を抑制させる効果や、アルコールの分解を早める効果もあると確認されているため、脳梗塞の予防にも効果的です。DHA・EPAの中性脂質を低下させる効果と併せて、非常に強力に働いてくれるでしょう。

組み合わせの悪い他の栄養素

DHA・EPAと相性の良くない栄養素は、特に報告されていません。「難消化性繊維」と同時に摂取することで、DHA・EPAの吸収が阻害されるとも言われていますが、科学的な検証が行われたエビデンスを見つけることはできませんでした。

難消化性繊維はキトサンなどの成分が含まれますが、キトサンのカプセルにDHA・EPAを入れると成分的に安定するという報告もあるため、この件についてはご紹介しないことにします。

DHA・EPAを摂るとなぜ脳梗塞が予防できるのか

心筋梗塞や脳梗塞の発症は、「血液がドロドロになる」「血管が硬くなる」ことが原因です。DHAやEPAには血液をさらさらに保ち、血管を柔らかくする効果があります。

アザラシが主食のイヌイット人は、血液中にDHAやEPAが豊富に含まれていることがわかっています。そんなイヌイット人の心筋梗塞の発症率は3%程度しかいないそうです。

日本でも2006年に厚生労働省が「魚食と心疾患の関係」の研究結果を報告しました。11年間40~59歳の男女約4万人を対象に追跡調査をした結果、魚をたくさん食べるグループは、少ないグループと比較すると心疾患のリスクが約40%低かったそうです。摂取量が多いグループは少ないグループに比べて心疾患のリスクは40%以上低いという結果が出ました。

また、脳梗塞や脳卒中のリスクも下げるとの報告が出ています。厚生労働省は30代以上の男女約9000人に、24年間追跡調査を実施。1日当たりのDHA・EPA摂取量の多いグループは、少ないグループと比べて脳梗塞や脳卒中での死亡リスクが20%低いことが分かっています。

心筋梗塞や脳梗塞を予防するためにも魚を積極的に食べましょう。「あまり魚を食べられない」「魚はどうしても苦手」という方はサプリメントでDHAやEPAを補うのがおすすめです。

1日の摂取量の目安

DHA・EPAで脳梗塞を予防するためには、1日あたり1g以上の摂取が効果的だと言われています。この目標値は厚生労働省より発表された数値で、18歳から70歳以上の年齢まで同値です。

また、DHA・EPAには過剰摂取による健康へのリスクがほとんどないとされているため、摂取量の上限値は定められていません。ただし、極端に大量摂取すると健康被害の可能性もあるため、サプリメントの用量を大幅に超えるような大量摂取は控えるようにしてください。

DHA・EPAの魚ごとの含有量と摂取目安について

DHA・EPAは青魚に多く含まれることで有名ですが、厚生労働省によると、魚からの摂取であれば約90gが理想的とされています。ただし、魚の種類によってDHA・EPAの含有量は異なり、白身魚と青魚など種類によっても異なるでしょう。

そこで、文部科学省から発表されているDHAとEPAの食品含有量を基に、食品での摂取ならどの程度の量が必要か算出してみましょう。DHAとEPAの含有量が多い食品と、その含有量を5位までご紹介します。

DHA 100gあたり EPA 100gあたり
1 みなみまぐろ(脂身) 4,000mg あんこう(肝) 3,000mg
2 くろまぐろ(脂身) 3,200mg やつめうなぎ(干し) 2,200mg
3 やつめうなぎ(干し) 2,800mg シロサケ(すじこ) 2,100mg
4 さば(開き干し) 2,700mg いわし(缶詰) 1,800mg
5 たいせいようさば(生) 2,600mg たいせいようさば(生) 1,800mg

出典:文部科学省 食品成分データベース『食品成分ランキング』

生のくじらはどちらの含有量も多いのですが、入手方法が限られているため省いています。

含有量が多い順に見てみると、比較的入手が簡単な食品で1gを摂取するためには、さばの開き干し、たいせいようさばの刺身、いわしの缶詰などであれば、50gほどの摂取で達成できることになります。
まぐろの刺身もDHA含有量は多いですが、脂身部分の含有量であることに注意が必要です。

DHA・EPA1g摂取のために必要な魚料理の分量について

水産庁のホームページでは、具体的な魚料理を例として取り上げて、1日の魚介類摂取目安量をわかりやすく示しています。DHA・EPA1gの摂取に必要な魚料理の量は、具体的には次の通りです。

  • アジの開き…0.7枚分
  • サンマの塩焼き…0.4尾
  • サバの煮つけ…0.3~0.8切
  • ブリ、ハマチの刺身…4.7切
  • カツオのたたき…9.1切
  • 焼き鮭…0.5~1.9切

出典:水産庁『(3)日本人の健康的な食生活を支える水産物』

DHAやEPAを1g摂取するために必要な魚の量は、このようにして見ると決して多くはありません。サンマの塩焼きを1尾食べれば約2gが摂取できることになるため、毎日の食生活に魚料理を取り入れれば、比較的簡単に摂取できるでしょう。

18歳未満の摂取量について

先にご紹介したDHA・EPAの1日の摂取量では、18歳以上が対象となっていました。厚生労働省の文書によると、18歳未満の摂取目標値は定められておらず、次のような注意書きが記載されています。

小児については目標量を算定しなかったが、成人の値を参考にして、魚を摂取する習慣を身につけることが望ましい。妊婦・授乳婦の付加量についても算定しなかった。

出典:厚生労働省『(PDF)3 脂質』

18歳未満の摂取目標値は定められていませんが、こちらの注意書きにあるように、1日1g以上の摂取を目標としましょう。また、小さな子どもは魚料理が苦手な場合も多いため、積極的に魚介類を食べる習慣を取り入れたいものです。

妊娠中の方・授乳中の方の摂取量について

先にご紹介した厚生労働省の文書の中で、注目したい点がもうひとつあります。それは、妊娠している方や、授乳中の方の目標値についても定められていないということです。

妊娠中の女性を対象とした研究によると、DHA・EPAの摂取量が多い方の方が、アレルギー性鼻炎になりにくく、骨密度が高かったと報告されています。ただし、水銀が含まれる魚は胎児に影響を与える場合があるため、魚の水銀含有量に気をつけるか、サプリメントから摂取するようにしましょう。

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献

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