脳梗塞の発症リスクが高い人の特徴

昨日まで元気だった人でも急に倒れてしまうことがあります。高血圧・糖尿病・心房細動など原因はそれぞれ考えられますが、脳梗塞を起こしやすい人は具体的にどのような人なのでしょうか。原因を知って、日々の生活に活かしていきましょう。

脳梗塞の発症リスクが高い人の特徴とは

最新の研究結果を元にして作られた「脳卒中治療ガイドライン2015」には、医師が診療の際に取り組むべき内容が記載されています。このガイドラインは医療体制の変化や研究の進歩状況によって変更。2015年に6年ぶりに改定されました。その中に、7つの危険因子について今まで以上に気を付けるべきという内容が記載されています。ではどのような人が脳梗塞を発症しやすいのでしょうか。

「脳卒中治療ガイドライン2015」に明記される
7つの危険因子

動脈硬化やできた血栓が流れこんで血管が詰まる脳梗塞。知らず知らずのうちに症状が進行し、急に倒れてしまう場合もあります。このような発作は大動脈だけでなく、細い血管が詰まったときも大事に至る場合があるので、注意が必要です。「脳卒中治療ガイドライン2015」には、7つの危険因子として高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙、飲酒、炎症マーカーが挙げられています。この7つが脳卒中を促進させるので、日々の生活の中で気を付けなければなりません。高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動・炎症マーカーは食事や運動などで予防できるほか、喫煙・飲酒を普段から多くおこなっている人は止めることで発症率を抑えることができます。日々の暮らしの中で意識することで予防できる場合もあるので、今一度見直してみましょう。脳卒中になる患者さんは世界中でも数多く存在し、2秒に1人の割合で発症していると言われています。また、後遺症が残ってしまうことも多い病気。自覚症状がない脳梗塞は、危険サインが表れてからではなく、日頃から予防する必要があるのです。

最大の危険因子は「加齢」と「高血圧」

脳梗塞の最大の危険因子は「加齢」と「高血圧」だと言われています。2025年には団魂世代が75歳以上に突入。

脳梗塞のリスクが高まる世代が急激に増えることが予想されます。ただ、加齢は生活習慣のようにコントロールできるものではありません。そのため、血圧を正常な数値で保てるかどうかがポイントになります。血圧の目標値は年齢・持病によって異なるので、自分の目標値を確認することが大切です。基本的には140/90mmHg。持病がある人は更に低く設定しておくと良いでしょう。血圧は高ければ高い程に脳卒中の確率が高まるといわれており、実験でも証明されています。心臓は常に拡大、縮小していますが、拡張した際に血液が心臓に戻ってくるときの血圧を拡張期血圧と言います。その血圧を下げるだけでも脳卒中の発症率は下がる結果が出ているのです。脳梗塞を予防するうえで、血圧を下げることは効果的だと言える方法なので、高血圧だと自覚している方は放置せずに改善していきましょう。

新たな指標「炎症マーカーとは」

改定された脳卒中治療ガイドラインには「炎症マーカー」の項目が追加されています。健康診断に「CRP値」項目がありますが、それが炎症状態を指標する値です。血管の組織に傷が付いてしまっている状態のことを言いますが、大きな自覚障害はありません。知らず知らずのうちに体の組織を壊してしまい、脳卒中を発生させるのです。この「CRP値」が高いということは、体の炎症状態が強まっていることを表すので、その分脳梗塞を発症しやすいといえます。万が一この「CRP値」が高い結果が出た方は、医師の指導のもと、生活習慣の改善や炎症抑制効果が期待できるスタチンを利用してみましょう。

3大リスクファクターは
「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」

脳梗塞は高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、飲酒、肥満、ストレスなどが原因で発症すると言われていますが、その中でも脳梗塞の3大リスクファクターと呼ばれているのが「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」の3つ。

この3つを予防するには生活習慣を見直す必要があります。主な予防・改善法を以下にまとめてみました。

  • 塩分を控えた食事を摂る
  • カロリーを減らして血糖値をコントロールする
  • 動物性脂肪分の少ない食事を摂る
  • 血圧を下げる薬を服用する
  • 運動療法と薬物療法を同時に行う

脳梗塞の原因の1つである血栓をつくらせない薬を服用するのも良いでしょう。脳血栓症の治療に使われる抗血小板薬、脳塞栓症の治療に使われる抗凝固薬などがあります。ネバネバした血栓のできやすい血液を、さらっとした血液にしてくれるので医師の指示通りに正しく服用することが大切です。この高血圧、糖尿病、脂質異常症の3つについて詳しく説明したページがあるので確認してみてくださいね。

特に高血圧の人は発症リスクが高い

脳梗塞の要因は複数存在しますが、その中でも特に発症リスクを高めてしまうのが高血圧。血管の壁に圧力をかけ続けていると血管はもちろん心臓にも負担がかかり、動脈硬化が進む仕組みになっています。厚生労働省が調査した結果では、収縮期血圧140~159mmHgの方は

110~119mmHgの至適血圧者より3倍の確率で脳卒中を発症。収縮期血圧が180mmHgを超えた重度の高血圧になるとその7倍にも発症確率が上がるとされています。

高血圧の方は普段の食事でまず塩分コントロールを行なうことが大切。目標値を超えてしまった、健康診断で血圧の高さを指摘されたという方はお薬での治療も必要ですが、まずは塩分を控えた食事を摂る食事療法が最適です。すぐに効果がでるわけではありませんが、継続が重要です。なかなか改善されなかった場合は、食事療法を続けつつ、降圧剤による治療を行なってください。そのほか、健康的な体重を維持する、なるべく寒暖差を無くす、アルコールやタバコをやめるなど日常的に予防することで高血圧の予防・改善に繋がります。

心房細動があると重篤な脳梗塞発作を起こしやすい

心房細動は心臓にある4つの部屋のうちの1つ・左心房がリズムよく収縮出来ないことによって血液がスムーズ流れず、渦巻き状になると血液が固まりやすくなってしまうのが原因。血液が固まってしまうと心臓の中に血栓ができてしまいます。その血栓が脳の血管に逃れ込んでしまうと、血管が詰まり脳梗塞を起こすと言われています(心原性脳塞栓)。糖尿病または高血圧に比べると心房細細胞の頻度は低いと言えますが、高血圧と心房細動が同時に発症すると発症率はグンと高くなってしまうのです。高齢化に伴って心房細動を発症する人が多くなっており、80歳以上になると3人に1人が発症しているというデータも。また、脳梗塞を発症した方5,411人のリスクファクターは高血圧63%、糖尿病26.5%、心房細動24.3%、高脂血症の24.5%という結果がでています。

脳梗塞のリスクを高める各要因についてくわしく説明

脳梗塞を起こしやすい人の特徴をまとめてみました。発症リスクを知ることは予防にも繋がるため、自分自身としっかり照らし合わせてみてください。

高血圧

高血圧のイメージ血管内を血液が通る際にかかる圧力を血圧と言います。数値では、最高血圧が140mmHg以上、あるいは最低血圧が90mmHg以上で高血圧症と診断され、専門的な治療が必要[注1]とされています。
高血圧になると血管に大きな負担がかかり、動脈硬化が促進。血管の柔軟性が失われ、閉塞したリ破裂しやすくなります。血圧が高い人ほど発症率は高まるため、適切な血圧対策が必要です。

高血圧と脳梗塞の関係について詳しく知る >

糖尿病

糖尿病とは、血液中のブドウ糖量が常に多い状態のこと(高血糖)。高血糖状態が続くとブドウ糖が血管にダメージを与え、動脈硬化が促進。とくに、糖尿病患者は血管壁内にアテロームができやすいため、脳梗塞のリスクがより高まります。
糖尿病予備軍とされる境界域糖尿病・耐糖能異常などを持つ人も、正常な血圧の人と比べると脳梗塞の発症率は高くなるので注意が必要。発症を防ぐには生活習慣の改善と共に、血糖のコントロールが何より大切となります。

糖尿病と脳梗塞の関係について詳しく知る >

脂質異常症

脂質異常症のイメージ血液中のトリグリセライド(中性脂肪)や悪玉コレステロールが多すぎたり、善玉コレステロールが少なすぎる状態。かつては高脂血症と呼ばれていた症状です。

心筋梗塞の危険因子である他に、脳梗塞の原因ともなっていることが最近の研究によって分かってきました。高血圧・糖尿病と同じく自覚症状に乏しいのが特徴で、動脈硬化によって重篤な症状を引き起こします。
糖尿病患者・腎臓病・甲状腺機能低下症の合併症として発症することもあるので、該当者は注意が必要。また、女性は更年期になるとホルモンバランスの変化により、コレステロール値が上昇しやすくなるので気をつけましょう。

脂質異常症(高脂血症)と脳梗塞の関係について詳しく知る >

肥満

肥満と脳梗塞の発症は、関節的に関係しています。肥満は、高血圧・糖尿病・脂質異常症といった脳梗塞発症の危険因子[注2]と大きく関連しているからです。
とくに、内蔵脂肪型肥満を土台に、脂質異常症・糖尿病・高血圧の中でどれか2つを併発している、メタボリックシンドロームは要注意。動脈硬化が速く進み、脳梗塞・心臓病といった生命に関わる症状のリスクを急速に高めます。

心房細動

心房細動のイメージ心房細動とは、心房が1分間に100~150回以上不規則に振動する不整脈。脳梗塞患者の10~20%に見られる原因で、心原性脳塞栓の50%は心房細動によるものであるとされています。

加齢と共に心房細胞を持つ人は多くなり、60歳以上では2~4%に認められます[注3]
心房細動が起こると心臓内の血液が淀んでしまい、血液が凝固しやすくなるのが特徴。できた血栓が血流によって運ばれ、血管に詰まって脳梗塞が発症するのです。予防法は生活習慣病・動脈硬化と同一ですが、加齢については対策が難しいため、日頃からの注意が必要となります。

高尿酸血症・痛風

プリン体と呼ばれる物質が過剰につくられたり、腎臓での排泄が十分に行われない場合などに、通常よりも血中の尿酸が濃い状態、つまり尿酸値が高くなっている状態を高尿酸血症と呼びます。さらに尿酸の一部が結晶化し間接に溜まり、炎症や痛みを起こした状態が痛風です。

尿酸が高まると血管では炎症が起こる他、腎臓の働きが低下することで、動脈硬化の大きな要因となります。さらに、老廃物を排泄する機能が弱まるため、脳梗塞のリスクが高まるのです。

喫煙・飲酒

喫煙のイメージ喫煙をするとタバコに含まれるタール・ニコチン・一酸化炭素が体内に入り、全身の血管が収縮。そのため高血圧になりやすくなり、脳梗塞へのリスクも高まります。

1日に20本以上タバコを吸う人は、非喫煙者に比べて男性で2倍・女性で4倍以上もリスクが高まると言われています。

また、飲酒に関しても、アルコール摂取量が多くなると[注4]、血管の収縮を促して血圧を上げてしまう作用があり、脳梗塞のリスクを高める恐れがあります。

喫煙・飲酒と脳梗塞の関係について詳しく知る >

ストレス

ストレスが脳梗塞のリスク要因になる、というと信じられない人も多いかもしれません。しかし、ストレスを甘く見てはいけません。

慢性的なストレスで自律神経が乱れることによって、血圧の調整ができなくなったり、血流が阻害されて、脳梗塞などの血管系の疾患を発症するリスクを高める可能性があるのです。

ストレスと脳梗塞の関係について詳しく知る >

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献

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