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脳梗塞の再発予防のために実践すべき5つの方法

脳梗塞はなぜ再発する?

「脳梗塞は再発しやすい」と言われますが、一体なぜ再発する確率が高いのでしょうか。その原因は、脳梗塞を発症した原因や危険因子が、生活習慣の中に潜んでいるからだと言われています。

脳梗塞を再発させやすい生活習慣を持っている

脳梗塞の危険因子と言われるものは、肥満や高血圧、動脈硬化、脂質異常症などが挙げられますが、これらは全て食生活や生活習慣などが原因で引き起こされるものです。加えて、大量の飲酒や喫煙など、嗜好品が原因の場合もあるでしょう。

つまり、脳梗塞を発症してしっかりとした治療を受けたとしても、これらの生活習慣が改善しなければ危険因子はなくならず、血管の中に血栓が作られやすい状態が維持されるのです。

生活習慣に関わる体の改善には時間が必要

長年の生活習慣をすぐに改善することはとても難しいことですが、これまでの生活習慣をすっきりと改善できるという、強い意志を持っている方もいるでしょう。

ですが、生活習慣を全て改善できたとしても、体や血液の状態が改善されるためには時間がかかります。生活習慣を改善して、体や血液が健康な状態になるまでに、脳梗塞が再発してしまう可能性もあるのです。

このように、脳梗塞は生活に根付いた原因から発症して、生活習慣によって築かれた体質によって発症する疾患だからこそ、再発しやすいと言われています。

脳梗塞が再発する確率とは?

再発しやすいと言われている脳梗塞ですが、実際に再発する確率はどの程度なのでしょうか。慶應義塾大学医学部神経内科の鈴木氏の報告によると、次のような確率とされています。

条件 再発・発症率
発症後12か月の抗血小板薬投与 3.81%
脳梗塞既往歴がある場合 5.02%
脳梗塞既往歴がない場合 3.59%

出典:神経治療34:194,2017『(PDF)非心原性脳梗塞の再発予防の最前線』

上の資料によると、脳梗塞を発症する確率と比較して、脳梗塞を再発する確率は約1.5%高いという統計になりました。また、再発予防治療を受けると、受けなかった場合と比較して再発率は約1.2%減少していることもわかります。

脳梗塞発症から10年間で約半数が再発

また、別のデータによると、脳梗塞を発症してから10年間の再発率を調査したところ、約半数にも及ぶ方が再発を経験しているという報告もあります。

この報告は、福岡県久山町の研究によるもので、一般的な日本人を対象とした32年間の調査の結果によるものです。

脳卒中の累積再発率
1年 5年 10年
脳梗塞 10.0 34.1 49.7
脳出血 25.6 34.9 55.6
くも膜下出血 32.5 55.0 70.0

出典:循環器疫学サイトepi-c.jp『[2005年文献] 脳梗塞の初発後10年の再発率は,くも膜下出血の再発率より有意に低い』

この報告では、くも膜下出血よりも脳梗塞の再発率が低いと報告されていますが、約50%もの再発率は決して低いとは言えないでしょう。

最も再発しやすいのは心原性

また、同じく福岡県久山町の研究結果を見ると、3種類ある脳梗塞の中でも、心原性の脳梗塞が最も再発率が高いことがわかります。

脳梗塞の病型別累積再発率
1年 5年 10年
ラクナ梗塞 7.2 30.4 46.8
アテローム血栓性 14.8 42.0 46.9
心原性 19.6 42.2 75.2

出典:循環器疫学サイトepi-c.jp『[2005年文献] 脳梗塞の初発後10年の再発率は,くも膜下出血の再発率より有意に低い』

心原性の脳梗塞は重い後遺症が残りやすいと言われていますが、他の脳梗塞と比較して再発率も高いので、リハビリと共に再発予防にも力を入れる必要があります。

脳梗塞の再発によるリスクについて

脳梗塞発症後の治療では、再発の予防を重視しながら行われます。それでは、脳梗塞を再発すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

そのまま命を落としてしまうこともある脳梗塞ですから、再発することは、またその危険と隣り合わせになることです。ですが、例え治療によって命を救われたとしても、その後の生活に影を落としてしまうこともあるとされます。

後遺症が悪化する可能性が高い

脳梗塞を発症すると、重度ではないにしても、何らかの後遺症が残ることが多いもの。脳梗塞が再発すると、以前の後遺症がさらに悪化する、新たな後遺症が残るなどのケースが非常に多いとされます。

例え、脳梗塞の再発が軽いものであっても、脳に血液が行き渡らなくなっているのですから、発症した部分の脳機能は低下しています。再発を繰り返すことで徐々に失われていく機能は増え、重度の後遺症へと発展する可能性があります。

後遺症の重度化は合併症の原因にも

脳梗塞の再発を繰り返して後遺症が重度になれば、合併症を引き起こす可能性も高くなります。特に、脳梗塞の後遺症としてよく現れる症状である「嚥下障害」は、肺炎を発症させる原因です。

次にご紹介する調査はアメリカミネソタ大学の研究による報告ですが、脳梗塞の後に再入院した方の中には、肺炎を発症した方がかなり多いことがわかります。

ミネソタ大学による脳梗塞後の再入院調査

脳梗塞発症後 5 年間の再入院の原因としては,脳梗塞の再発が 24.0%,肺炎が 20.4%,心不全が 18.6%を占めていた.脳梗塞の再発と同様に肺炎が再入院の一般的な原因となることが示されており,脳梗塞の生命予後改善のためには肺炎に対する対策の重要性が示唆される.

出典:第35回日本脳卒中学会 シンポジウム2,2010『(PDF)脳卒中患者の生命予後と死因の5年間にわたる観察研究:栃木県の調査結果とアメリカの報告との比較』

再発を繰り返せば肺炎のリスクも高まる

脳梗塞とは関係が薄く感じられる肺炎ですが、ミネソタ大学の調査にもあるように、脳梗塞後の嚥下障害によって引き起こされることは珍しくありません。

例え、1回目の脳梗塞で嚥下障害が残らなかったとしても、2回、3回と脳梗塞を再発させれば重度の嚥下障害になる可能性があり、その後の予後を悪化させてしまうリスクを高めます。

脳梗塞の再発予防に欠かせないこと

脳梗塞の後遺症を最小限に抑えるため、発症後の予後を良好にするためにも、脳梗塞の再発を予防することは非常に大切です。

再発予防には、病院での治療や検査、処方薬を飲むことも欠かせませんが、今日から自宅で取り組めることもたくさんあります。

病院での脳梗塞再発予防治療とは

病院では脳梗塞発症後、すぐに「抗血小板療法」が開始されます。この治療を行うことで、90日間の再発リスクが約80%も減少したと報告されているほどの治療法です。

また、急性期の治療が終わってからは、患者の体の状態に合わせて、降圧剤や抗血栓薬が処方されます。降圧薬にはカルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬などが用いられることが一般的です。

生活習慣の改善が一番のカギ

再発予防には病院の治療を受けることも大切ですが、生活習慣に根差した疾患である脳梗塞は、生活習慣を改善していくことが一番の再発予防になります。

治療を受けて血液をサラサラにし、血圧を下げることができたとしても、生活習慣を改善しなければ一生治療薬から離れることはできません。

その点、生活習慣自体を改善して、少しずつ体を健康的な状態に改善していければ、脳梗塞再発の根本的な原因を解決することも可能。次でご紹介する日常生活の改善法を参考に、脳梗塞再発に取り組んでいきましょう。

脳梗塞の再発を予防するためには
日常生活の見直しが必要

食事と食習慣を改善する

脳梗塞の予防と食生活には、深い関係性があります。規則正しい食事時間・栄養バランスを心がけるとともに、脳梗塞予防に悪い食品を避けることが大事。また、脳梗塞予防に効果があるとされる食品を積極的に取り入れるようにしましょう。このページでは、脳梗塞予防に悪い食品、良い食品・栄養の例を挙げていますので、参考にしてください。

脳梗塞を予防するための食事改善について詳しく知る >

サプリや健康食品で有効成分を摂る

脳梗塞予防に効果があるとされる、健康食品・サプリメントに含まれる成分をご紹介。酵素、プロポリス・レシチン・食物繊維・イチョウ葉エキスの特徴と、脳梗塞予防に関する働きについてまとめていますので、ぜひ参考にしてください。日常の食生活で摂りにくい成分は、健康食品を利用するのもひとつの手段ですよ。

脳梗塞予防に効果があるとされる成分について詳しく知る >

正しい水分補給を心がける

脳梗塞の予防や再発防止を考えるうえで、水分摂取は重要です。このページでは、日常的に気をつけたい水分補給のポイントについて解説しています。脱水症状になると血液の流れが悪くなり、ドロドロ血液になるので注意が必要。それを防ぐための上手な水分補給のコツを、摂取のタイミング・摂取量などに分けて説明しています。

脳梗塞を予防するための水分補給について詳しく知る >

生活習慣を見直す

肥満に繋がる食生活・運動不足・飲酒や喫煙のほか、食生活やストレスまで、脳梗塞のリスクを高める生活習慣について解説。それぞれの習慣が身体に及ぼす悪影響や、改善するメリットについても注目してください。

脳梗塞を予防するための生活習慣について詳しく知る >

薬物療法で再発を予防する

脳梗塞の再発を防ぐための薬剤と効果、懸念される副作用についてまとめたページ。再発を予防するには、薬物治療は必要になりますが、重い副作用を伴う場合もあります。副作用などのリスクを正しく理解した上で、適切な薬物療法を受け、処方された薬剤をしっかり継続していくことが大切です。

脳梗塞の再発を防ぐための薬剤と効果について詳しく知る >

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献

国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス:[88] 脳卒中の再発を防ぐ

社団法人 日本脳卒中協会 愛知県支部:◇脳卒中とは…

国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス:[115] 肺炎...予防・治療のポイント