ポリフェノールの脳梗塞予防効果をチェック
ワインやチョコレートに入っているポリフェノール。身近な食べ物に含まれていて「生活習慣病に良い」「美容にも効果的」といったイメージですが、脳梗塞や動脈硬化にも効果があるのでしょうか?ここでは、さまざまなポリフェノールと脳梗塞の関係を解説します。
ポリフェノールとはどのような成分?
ポリフェノールとは植物の茎や皮、実などに含まれている苦味や渋み、色素を出す成分。自然界には5,000種類以上のポリフェノールが存在しています。ブドウや緑茶のように渋みが強かったり色が濃かったりする植物には特に豊富です。
ポリフェノールは、抗酸化作用という「細胞を老化させる活性化酸素を抑える力」を持っているため、生活習慣病やアンチエイジングに効果的と言われています。その効果は素晴らしく「動物よりも植物のほうが長寿なのはポリフェノールのおかげなのでは」と言われるほどです。
水に溶けやすいため、体の60%が水で出来ている人間にも浸透しやすく、短期間での効果が期待できます。ただ、持続性は低く毎日の摂取が必要です。
食べ物によって含まれているポリフェノールは異なっていて、それぞれ独自の働きを持っています。中には脳梗塞の改善・予防につながるものも。ここでは、脳梗塞と関わりの深い代表的なポリフェノールをみてみましょう。
ポリフェノールの種類別 効果効能一覧
脳梗塞=脳の血管が詰まって起こる病気です。つまり、血管に対して作用するポリフェノールこそ脳梗塞の改善につながる成分といえるでしょう。以下では、血管の健康状態を改善するポリフェノールの代表を紹介します。
- カカオポリフェノール:チョコレート・ココア
血管内の炎症を軽減し血管を広げる働き - りんごポリフェノール:りんごの皮
血液をドロドロにする原因を予防する働き - ルチン:そば・いちじく
毛細血管の弾力性を保ち強化する働き - ケルセチン:タマネギの皮
赤血球を柔らかくして詰まりを防止する働き - ショウガオール:生姜
血管を広げて血流をスムーズにする働き - カテキン:緑茶
血管内皮機能を改善する働き
各ポリフェノールが持つ効果をより詳しく紹介します。
カカオポリフェノールの効果
カカオポリフェノールは主にチョコレートに含まれており、血管を広げる働きを持っています。
血管内で炎症が起こると、炎症に阻まれて赤血球が詰まりやすくなります。カカオポリフェノールは炎症を軽減させる作用があるため、赤血球を詰まらせる炎症が小さくなり、血が通りやすい血管にしてくれるのです。
カカオポリフェノールの血液愛知学院大学とチョコレートで有名な明治の実験でも証明されています。実験では健康な男女11名のカカオポリフェノール500mhを摂取する前と後の血液の流れ落ちる時間を比較。すると、全員の血液が流れ落ちるまでの時間が短縮されたという実験結果となりました。それだけ血液がサラサラになったと考えられます。
【そのほか期待されている効果】
- 悪玉コレステロールの酸化を抑制する働きによる動脈硬化予防
- 抗酸化作用による美肌効果
りんごポリフェノールの効果
りんごポリフェノールは血液をドロドロにする原因である「脂質の酸化」を防ぐ作用を持つポリフェノールの一種。脂質が酸化すると悪玉コレステロールが増え、増えた悪玉コレステロールは血管壁にくっつき血管をもろくします。
もろくなった血管はやがて硬くなり、動脈硬化や脳梗塞の一因に。つまり、脂質を酸化させないことが予防になるのです。
りんごポリフェノールは優れた抗酸化作用を持っており、体の酸化を抑制してくれるため、脂質の酸化を防ぎ血液がサラサラになるよう手伝ってくれます。
【そのほか期待されている効果】
- 抗酸化作用による老化防止
- 口臭の原因メチルメルカプタンの増加を抑える働きによる口臭予防
- メラニン色素の生成抑制作用による美白効果
- 免疫の過剰反応抑制によるアレルギー抑制
- 筋力アップ
ルチンの効果
ルチンとはイチジクやそばに含まれているポリフェノールで、毛細血管を強くする作用があります。毛細血管は体の血管の99%を占めており、各体の組織へ栄養と届ける小さいながらも大切な血管です。
毛細血管が減ってしまうと動脈硬化につながります。毛細血管は体の隅々まで栄養を届ける役割を担っているため、減ってしまうと酸素や栄養が届かなくなることに。
届いていないことを脳が察知すると、心臓が強い圧をかけて血液を送り出そうとして、結果、高血圧・動脈硬化につながります。ルチンは毛細血管の弾力性を保ち強化するため、動脈硬化の予防効果があると期待できます。
【そのほか期待されている効果】
- 抗酸化作用による認知症予防
- ビタミンCの吸収率を高める作用による美肌効果
- インスリンの分泌を促す作用による糖尿病予防
- 変形性関節症の改善
ケルセチンの効果
ケルセチンは玉ねぎの皮に多く含まれているポリフェノールで、赤血球を柔軟にして血流をスムーズにする作用があります。
赤血球は健康な状態だと、柔らかく自由に変形して毛細血管の0.01mmの細さでも流れることができます。けれど、活性化酸素のダメージを受けると赤血球は硬くなり、スムーズに血管を通れなくなってしまうのです。ケルセチンは活性化酸素から赤血球を守る働きがあるため、赤血球が活発に流れるようになります。
さらに、ケルセチンには血管内皮機能を改善する効果もあります。血管内皮機能とは、血管の一番内側にある細胞が持っている血管の健康を維持する働きのこと。この機能が異常が低下すると、血管が悪玉コレステロールの影響を受けて、硬くなりやすくなります。
【そのほか期待されている効果】
- コレステロール値を下げることによる糖尿病予防
- 抗炎症作用から関節の痛みをやわらげる効果
ショウガオールの効果
ショウガオールは血行促進効果が期待されている生姜に含まれるポリフェノールです。
ショウガオールは、プロスタグランジンという血管・血小板の働きを弱める物質を抑制する働きがあるため、血管を正常に保つことができます。さらに、血管を広げることで血流の流れをスムーズにする効果も。動脈硬化防止に効果的な成分です。
【そのほか期待されている効果】
- 血液の流れを良くすることで血行不良が原因の冷え性や肩こりの改善
- 抗酸化作用によりシミや肌荒れの予防
カテキンの効果
カテキンは主に緑茶に含まれるポリフェノール。抗酸化作用を持ち、血管内皮機能を改善する効果があります。
おさらいすると血管内皮機能は、血管の一番内側にある細胞で、血管の健康状態を維持する機能のこと。西南女学院大学がおこなったカテキンの研究によると、20代女性9名が4週間カテキンを摂取した結果、体重や体脂肪、血圧、血中脂質に変化がないにも関わらず、摂取前よりも血流の流れが改善されたことがわかりました。これは、血管内皮機能が活発になったことが考えられます。
結果、カテキンは血管内皮機能を改善すると認められるようになりました。
【そのほか期待されている効果】
- 血中のコレステロール値の低下
- 血糖値の上昇を抑制
- 体脂肪を減少させ肥満予防
- 抗菌作用による虫歯や口臭の予防
組み合わせの良い他の栄養素
にんにく由来成分
緑茶の中に含まれているポリフェノールである「カテキン」は、特定保健用食品や機能性表示食品にも用いられているほど、機能性の高さが認められている成分ですが、吸収性が悪いという点が弱点です。
ですが、九州大学の研究によると、にんにく由来成分との同時摂取によって、緑茶カテキンの効果が高まると報告されています。
その理由は、にんにく由来成分が、cGMP分解酵素である「PDE5」の発現を抑えるから。PDE5は、体内で緑茶カテキンの効果を妨げてしまう酵素ですが、にんにく由来成分によってその発現を阻止することによって、効率的に緑茶カテキンを働かせられるようになります。
「にんにく由来成分」について具体的な成分名は示されていませんが、肥満解消効果、免疫機能向上、動脈硬化予防、血栓予防、アレルギーや認知症、脂肪肝予防などに効果を発揮するとされているため、脳梗塞予防にも効果が期待できるでしょう。
乳たんぱく質
牛乳や脱脂粉乳、脱脂乳に含まれている乳たんぱく質は、緑茶に含まれているカテキンの効果作用時間を長くするという報告があります。カテキンには持続時間が短いという特徴がありますが、乳たんぱく質と同時に摂取することで、長時間に渡りカテキンの効果を得ることができるのです。
単回投与の系では、茶殻ペーストよりカテキンの方が顕著な血圧効果を示した。カテキン単独の血圧降下作用は2時間しか持続しないが、脱脂粉乳と同時に投与することによって8時間後も血圧降下作用を示すようになった。出典:一般社団法人 Jミルク『(PDF)脱脂粉乳と緑葉タンパク質との組み合わせによる健康増進機能を高めた新しい食品の設計』
このように、研究の結果によると、脳梗塞予防に必要である「血圧降下作用」についての明らかな差が認められています。牛乳にも乳たんぱく質は含まれますが、カロリーが高く脂肪分も含まれている点を考えると、カテキンと脱脂粉乳、脱脂乳の同時摂取がおすすめです。
組み合わせの悪い他の栄養素
鉄分
鉄分との相性が悪いポリフェノールは、コーヒーやお茶の中に含まれている「タンニン」のみです。タンニンには鉄分の吸収を阻害する働きがあるため、せっかく摂取した鉄分が吸収されなくなり、そのまま体外に排出されてしまいます。
一例として、食事中にタンニンが含まれるお茶を一杯飲むと、その食事から摂取できる鉄分の量は、約60%にまで減少してしまうと言われています。
タンニンも健康促進に役立つポリフェノールですが、鉄分と一緒に摂取することは控えましょう。また、コーヒーやお茶を日常的に飲んでいる方は、鉄分を多く含む食品を摂取するように気をつけてください。
1日の摂取量の目安
「国民生活センター」からの発表によると、ポリフェノールに1日の摂取量目安は存在しないとされています。これは、下の文書によって記載されているように、ポリフェノールがどの程度の摂取によって健康効果をもたらすのかということに関して、はっきりとした研究結果が出ていないことが原因です。
これも、諸説あるが、疫学的調査によるものが多く、どのような種類のポリフェノールをどれくらい摂れば健康維持に効果があるのか(あるいは全く摂らなくても大丈夫なのか)、一概にはっきりといえるような数値や研究結果はない。
ポリフェノールの摂取目安量は、具体的な数字として決まっていないどころか、全く摂取しなくても良いのではないかという考えもあります。ただし、体を維持させるために必ず必要な栄養素ではないにしても、脳梗塞の予防という観点から考えれば、摂取したほうが良いことは確かでしょう。
また、ポリフェノールは普段の食生活の中で、食品から摂取することも容易な栄養素です。そのため、単体での摂取に特化するのではなく、他の栄養素とバランスよく摂取することが好ましいと考えられていることも一つの理由となっています。
食品からの摂取で注意するべきこと
ポリフェノールを多く含んでいる代表的な食品には、チョコレートや赤ワインなどがあります。ですが、これらの食品の大量摂取は健康に悪影響を及ぼしかねません。
チョコレートは肥満の原因となり、赤ワインのアルコールは高血圧の原因となります。脳梗塞の予防という点からも注意が必要なため、食品からのポリフェノール摂取は過剰にならないように注意が必要でしょう。
国民生活センターによると、食品からの大量摂取が健康に害を与えるため、摂取目安が存在しないともされています。
もし食品からたくさん摂取したいのであれば、果物や野菜の中でポリフェノール量の多いものや、緑茶、そばなどを積極的に摂取するようにし、カロリーとアルコール摂取量を抑えることが大切です。
加工食品に含まれるポリフェノール量について
ポリフェノールを含有している加工食品の中には、その含有量が記載されているものが少なくありません。チョコレートは特にその傾向が強いので、記載されているポリフェノール含有量を目安にしながら、商品選びをしているという方も多いでしょう。
確かに、同じような商品を選ぶのであれば、少しでも健康に良いものを選びたいものです。ただし、ポリフェノールは記載が義務付けられている栄養素ではないため、分析方法は各メーカーによって異なっている可能性もあります。
つまり、違うメーカーの商品同士を比較したときに、ポリフェノール含有量が同じ数値で記載されていたとしても、実際に含まれているポリフェノール量が異なるという可能性があるのです。
また、先にご紹介したように、「ポリフェノール」という成分にはいくつもの種類があります。それぞれの種類によって効果も異なるため、「ポリフェノール」という括りでその食品の機能性を比較することはできず、幅広い食品から様々なポリフェノールを摂取することが理想的です。
この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット:「ポリフェノールの種類と効果と摂取量」
- 株式会社 明治:「チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究 中間報告」
- 消費者庁ウェブサイト:「販売しようとする機能性表示食品の科学的根拠等に関する基本情報」(PDF)
- 国立情報学研究所:「茶カテキンの経口投与によるヒト血管内皮機能の改善効果に関する研究」(PDF)
- 独立行政法人 国民生活センター:ポリフェノール含有食品の商品テスト結果
- 国立研究開発法人 科学技術振興機構 新技術説明会:(PDF)ポリフェノールの新たな機能性とその機能性増強法
- 独立行政法人 国際協力機構:(PDF)開発途上国における鉄欠乏性貧血症対策