アリシンの脳梗塞予防効果をチェック

アリシンは玉ねぎやにんにくなどに含まれるイオウ化合物です。疲労回復や殺菌効果に加え、血液をサラサラ、キレイにしてくれる成分としてよく知られている有効成分です。さらにいくつもの権衡効果が認められていますので、改めてここでアリシン、そしてその前駆物質であるアリインについても勉強しておきましょう。

アリシンとはどのような成分?

アリシンは強いニオイを持つイオウ化合物の一種。主にたまねぎやにんにくといったユリ科の野菜や、大根・わさびなどアブラナ科の野菜に含まれている成分です。
にんにくには特に多く含まれており、にんにくが持つ特有の匂いはアリシンによるもの。劣化するまでの時間が短いため、新鮮であればあるほど独特な香りを放つ特性があります。

アリシンは生の食品を加熱・刻む・潰すことによって、アリインという物質が分解されることでつくられる成分。細かく刻むほどより多くのアリシンを発生させることができるのです。
生のにんにくは食べすぎると腹痛や貧血を起こすおそれがあるので、1日1片を目安にすると◎。加熱する場合は2~3片ぐらいが適量です。

アリシンの効果効能一覧

アリシンがビタミンB1と結合すると、アリミチンというビタミンB1の成分に変化します。ビタミンB1は水溶性のため、体内で使われなければ尿と一緒に排出されるのが普通。ですがアリチミンは血液中に長くとどまるため、ビタミンB1が排出されにくくなるのです。

ビタミンB1は体内で糖質をエネルギーへ変換する働きがあります。そのため、アリチミンが長くとどまることでエネルギー代謝が促進され、疲労を回復させる作用があるのです。

また、アリシンが変化したアホエンには強力な殺菌作用があります。コレラ菌・サルモネラ菌・ぶどう球菌・赤痢菌・チフス菌といった多くの細菌の増殖を抑制する作用があることが確認されています。
ほかにも、免疫細胞のひとつであるナチュラル・キラー細胞の働きを促進させる作用があるのも確認されているそうです。

アメリカのフロリダ研究者たちが行った実験では、アリシンを摂取したグループと摂取しなかったグループで分けてナチュラル・キラー細胞の働きを比較。それぞれのグループの血液にがん細胞を混ぜたところ、摂取したグループの方が140~160%も多くのがん細胞を破壊したという結果が出ました。

血流改善効果

血液がドロドロになる要因として挙げられるのが「中性脂肪」「悪玉コレステロール」「血栓」など。現代の食事には中性脂肪やコレステロールを含む食品が多く、栄養バランスを考えないと血管内に脂質が溜まりやすくなり、血行が悪くなるのです。

アリシンは善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす作用があるので、血液改善効果があります。
また、アリシンを含むイオウ化合物は血液が固まりやすくなるのをおさえ、血栓がつくられることを防止。血液の血行がよくなります。血栓を予防することで、脳梗塞や動脈硬化の予防にもつながるのです。

血糖値の上昇抑制効果

血糖値は血液中に含まれるブドウ糖の濃度のこと。血糖値が高くなると、糖尿病を引き起こすおそれがあります。
糖尿病は生活習慣病のひとつで、ブドウ糖が有効に使われずに血液中に残ってしまい、血糖値が高くなっている状態。悪化すると合併症や動脈硬化を引き起こしてしまいます。

アリシンには血糖値の上昇を抑える作用があるため、糖尿病の予防に効果が期待できる成分。血糖のバランスをコントロールする役割があるインスリンというホルモンの分泌を促し、血糖値の上昇を抑えてくれます。

抗ウイルス・抗菌作用

アリシンには抗菌作用があり、サルモネラ菌・チフス菌・コレラ菌といったさまざまな病原菌の増殖を抑え、体を守る働きがあります。昔は食中毒を防ぐための薬味としても利用されていたそう。

アリシンは抗酸化力も持っているため、たんぱく質や脂質などが酸素によって酸化されるのを防ぐ働きがあります。ストレス・喫煙・紫外線などが原因で増えるといわれる活性酸素を抑え、生活習慣病の予防にも効果あり。

また、アリシンにはウイルスの増殖を抑制する効果もあるため、風邪予防にも役立つといわれています。古典文学の源氏物語にも、アリシンを含むにんにくが風邪薬として使われていたという記述があるのだとか。

疲労回復効果

にんにくは疲労回復や、スタミナアップ効果があるといわれていますが、それはアリシンの働きによるもの。アリシンは糖の代謝を促す作用があり、ビタミンB1と結合してビタミンB1が持つ効果を持続させます。

ビタミンB1は疲労回復に必要な成分。不足すると動悸や息切れといった症状が見られるようになります。近年、加工食品や清涼飲料などを中心とした食生活が根付くようになり、ビタミンB1が不足しやすい時代です。
だからといってビタミンB1を摂り過ぎると、体外に排出されてしまいます。ですがアリシンはビタミンB1と結びつくことで体内に長い時間とどまらせる働きがあり、疲労回復の効果を持続させることが可能なのです。

食欲増進効果

「にんにくやニラは夏バテ防止に良い」と言われますが、その理由は、アリシンに食欲増進効果があるからです。アリシンには、胃腸の働きを活発にする働きがあり、粘膜を刺激することによって消化吸収をサポートしてくれます。食欲がないときにアリシンが含まれた食品を食べると、体に元気を与えてくれるでしょう。

また、ビタミンB1の働きを良くして、糖質の代謝を促進させることも理由のひとつです。アリシンによってビタミンB1が働くようになると、体内の糖質を効率的にエネルギーに変換してくれるため、食品によるエネルギー摂取が行える状態になります。

アリシンは、ビタミンB1への作用と胃腸への作用によって、体全体を元気にし、活力を与えてくれる存在だと言えるでしょう。

ストレス解消効果

ビタミンB1は糖質を代謝させて活力を作り出す栄養素ですが、ストレスに対する抵抗力を高めるための役割も果たしています。人間のストレスには、脳と神経系が深く関わっていると言われますが、脳と神経系がエネルギーとしているのは、糖質だけだとされるからです。

ストレスが蓄積されたときに、脳のエネルギーとなる糖質が不足していると、体はたんぱく質を分解して脳に栄養補給しようとします。すると、筋肉を作るために必要なたんぱく質がなくなってしまうため、ストレス解消には適度な糖分を摂取することが大切です。

組み合わせの良い他の栄養素

ビタミンB1

アリシンを摂取するときに、ぜひとも一緒に摂取したい栄養素が「ビタミンB1」です。ビタミンB1は、アリシンとの組み合わせが良い栄養素の代表格といえます。

その理由は、アリシンはビタミンB1と結合しやすく、体内でのビタミンB1吸収率が高くなるからです。ビタミンB1は、体内の糖質の代謝を促進させ、糖質をエネルギーに変える作用を持っています。アリシンによって吸収率が高まったビタミンB1は、より多くの糖質をエネルギーへと変えて、高い疲労回復効果を発揮してくれるでしょう。

にんにくはアリシンが多く含まれていることで有名ですが、ビタミンB1の含有量も多いため、にんにくだけで糖質の代謝活性化を完結することができます。また、ビタミンB1は、豚肉やうなぎにも多く含まれている栄養素です。

糖質

ビタミンB1の働きを活性化させる働きを持つアリシンですが、ビタミンB1による疲労回復効果を得るためには、エネルギーの源となる糖質も摂取しなければ意味がありません。糖質の過剰摂取は肥満を招きますが、不足すると活力がなくなるだけでなく、脳に栄養が行き渡らず、思考力や判断力の低下、ストレス耐性の低下などの原因になります。

ストレスは高血圧の原因でもあり、脳梗塞のリスクを上昇させます。ストレスを感じたときや考えがまとまらないときは、アリシンとビタミンB1、糖質の組み合わせで食事を摂ることをおすすめします。

組み合わせの悪い他の栄養素

アリシンと組み合わせの悪い栄養素は、特に報告されていません。他の栄養素との同時摂取に弊害はないので、過剰摂取に注意しながら、積極的に摂っていきたい栄養素です。

アリシンを摂るとなぜ脳梗塞が予防できるのか

脳梗塞を引き起こす原因に動脈硬化があります。動脈硬化とは、コレステロールの増加によって血管が厚く硬くなり、血流の流れが悪くなっている状態のこと。
アリシンには血液が固まりやすくなるのを防ぎ、血栓がつくられないようにする効果があります。血行が良くなることで動脈硬化の防止になり、結果的に脳梗塞が予防できることに繋がるのです。

アリシンは生の食品を加熱・刻む・潰すことでアリインという物質が分解され、つくられる成分。アリシンを効率よく摂取するためには、細かく刻むなどの下ごしらえをするほうが良いと思います。ただ、アリシンの前駆物質であるアリインにも血液サラサラ効果があるため、アリインを摂りたい場合はそのまま酢漬けにするなどして食べると良いでしょう。

アリシンを摂取するのにおすすめの食品がにんにくやたまねぎ、長ネギ、にらなど。特ににんにくはアリシンが豊富に含まれている食品です。もしもにんにく特有のニオイが苦手な場合は、加熱することで緩和されます。アリインをアリシンに変える酵素は熱に弱く水に溶け出す性質をもっているため、あまり長く調理すると有効成分のアリシンが消えてしまうので注意が必要です。

アリシンは食品内部80度以上になる加熱で激減

にんにく、たまねぎ、にらなど、ネギ類に含有されているアリシンは、比較的食品から摂取しやすい栄養素です。ただし、アリシンを摂取するためには、すり潰す、刻むなどの加工が必要であり、加熱しすぎると破壊されてしまうという弱点があります。

一例を挙げれば、にんにくなどの食品内部が80度以上などの高温にさらされた場合、アリシンを生成する酵素は失われるとされます。酵素を失ってしまえば、食品中でアリシンを生成できなくなるため、食事での摂取ができなくなります。

そのため、効率的に摂取するためには、高温になるような調理をしないことが大切です。とは言え、アリシンを作り出すためにすり潰す、刻むなどの加工をしたネギ類は辛味やニオイも増すため、加熱しなければ食べにくいという場合もあるでしょう。

アリシンは高圧処理後の冷蔵保存で増加する

そのような方には、高圧処理の後で冷蔵保存をした食品がおすすめ。その理由は、にんにくに高圧処理を施してから冷蔵保存をすると、すり潰す、刻むなどの加工をしなくても、アリシンが増えるという報告があるからです。

ご自宅で食品の高圧処理は難しいでしょうが、もしも高圧処理されたにんにくやたまねぎなどが販売されていたら、脳梗塞予防のためにも、それらを購入してアリシンを摂取するというのもひとつの方法です。

1日の摂取量の目安

アリシンの1日の摂取量の目安は約18~54mg程度と考えられますが、あくまで目安であり、厳しく定められているわけではありません。

アリシンを食品から摂取する場合、加熱したにんにくであれば2~3片(16g~24g)とされています。農林水産省によると、にんにくの摂取量は1日1片程度(8g)が適量とされていますが、いずれもアリシン摂取量の限度としてではなく、「にんにくの刺激が体に強い」という理由も加わり、少量の摂取が推奨されているようです。

この2件に従って、アリシンの摂取目安量をにんにくから換算してみましょう。「国立研究開発法人産業技術総合研究所四国センター」によると、にんにく100g中に含まれているアリシンの量は230mgと報告されているため、にんにく1片に含まれているアリシンの量は約18mgとなります。そのため、1日に約18~54mg程度が摂取量の目安となるでしょう。

参考:国立研究開発法人産業技術総合研究所四国センター『(PDF)食品中の健康機能性成分の分析法マニュアル』

アリシンの過剰摂取について

先にご紹介した1日の摂取目安量は、「にんにくから摂取するなら」という前提条件があるため、純粋なアリシン摂取目安量とは言えません。

ですが、アリシンを大量に摂取した場合は、吐き気や嘔吐、食欲不振、出血、溶血などの副作用があるとされているため、一般的には約18~54mgの摂取として問題ないようです。

これらの副作用は、アリシンの血液サラサラ効果が強く現れすぎることも原因で、出血しやすくなり、貧血を起こすこともあると言われているため、度が過ぎた過剰摂取には注意しましょう。

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献

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