ビタミンEの脳梗塞予防効果をチェック

人間の身体は約60兆の細胞が、血液から栄養を受け取って活動しています。なかでもビタミンEは細胞の天敵である活性酸素を除去する働きを持つ重要な成分。ビタミンEの特徴や効果、脳梗塞を予防する理由などをまとめてみました。

ビタミンEとはどのような成分?

ビタミンEの血液サラサラ効果を調査ビタミンEは油脂に溶けやすい脂溶性ビタミンの1種です。
ひと口にビタミンEといっても、1つの成分でできているのではありません。トコフェロール(4種)・トコトリエノール(4種)と呼ばれる8種類の物質で構成されており、これらの物質を総称してビタミンEと呼びます。
ビタミンEには抗酸化作用があり、さまざまな病気の原因にもなる活性酸素を除去して体を健康に保ってくれるのです。ビタミンEを多く含む食材は、アーモンドやピーナッツなどのナッツ類に豊富に含まれており、ほかにもモロヘイヤ、オリーブ、カボチャ、アボカドなどの野菜類にも含まれています。

ビタミンEの効果効能一覧

ビタミンEは、血管や血液の健康を保つ役割がある成分です。また血管の壁や細胞を活性酸素・コレステロールなどの有害物質から守り、ダメージを減少します。さらに毛細血管を拡張させて、血流を良くする効果もあるのです。
脳梗塞や心筋梗塞は血流が滞ることで発生します。血流が促進されれば、血行不良が改善されて脳梗塞・心筋梗塞のリスクが低くなり、さらに肩こり・頭痛・冷え性などの改善にも役立ちます。また、細胞の新陳代謝が活発になるため、美肌効果も期待できるのです。
ビタミンEに含まれる成分トコフェロールには「子どもを産む力を与える」という意味があります。不妊を解消するための研究を行なっていた際に、動物から発見されたビタミンです。ビタミンEは卵巣や副腎などに多く蓄えられていて、女性ホルモンの分泌を調整する役割を持ち生殖機能を維持してくれます。さらに、胎児が育つ段階で発生する酸化ストレスを軽減しているのではないかと考えられています。また、医薬品としても使われており、月経前症候群や生理不順、生理痛などの婦人科系の症状緩和にも役立つすぐれた成分がビタミンEなのです。

抗酸化作用

体内に酸素が取り込まれたうち、数%は活性酸素に変化するといわれています。
活性酸素は身体の細胞を傷つけてシミ・しわなどの肌トラブルやがん・動脈硬化などの症状を招く原因に。活性酸素は紫外線や大気汚染物質、ストレス、喫煙などでも過剰に発生してしまいます。ビタミンEには抗酸化作用があり活性酸素と結びつきやすいため、細胞がダメージを受けるのを防止。
また、免疫機能を高めて、体内に侵入したウィルスや細菌を撃退する効果があります。ビタミンEは身体にとって重要な役割を果たす物質なのです。

血流促進作用

血液がドロドロだと血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞などの疾患の引き金になります。
血液がドロドロになってしまう原因はさまざまですが、タバコを吸う人は特に注意が必要です。
タバコには血管を収縮する作用があり、吸ってしまうと血流が悪くなります。脳や皮膚へ血液が流れにくくなり、心拍数や血圧も上昇。頭痛や肩こりなどを引き起こします。
タバコを止めることが良いですが、どうしても難しい場合はビタミンEを摂って、血管が受けるダメージを予防するようにしましょう。

動脈硬化の予防効果

ビタミンEには血管が受けるダメージを防ぐ働きがあります。
さらに、善玉コレステロールを増やして、悪玉コレステロールを除去する働きを活性化して動脈硬化を防いでくれる作用も。
動脈硬化は血管内に悪玉コレステロールが溜まってしまうことが原因で起こります。
コレステロールによって血管の壁が傷つくと、血小板が傷を修復しようと集結。修復を何度も繰り返すうちに血管の弾力性が失われていき、粥状効果と呼ばれる粘りが出やすい状態になります。
この粥状効果が出ている部分に赤血球・白血球・血小板などが沈着していき大きな塊に。
この塊が剥がれてしまうと、血管を塞いで血流を止めてしまうのです。この塊を血栓と呼び、血栓が詰まって血が細胞に行渡らない状態を梗塞と呼びます。
脳で起きた場合は脳梗塞、心臓で起きた場合は心筋梗塞と名称が変わります。

生活習慣病の予防効果

ビタミンEには身体を酸化から守る働きがあります。ほかにも前立腺がん・胃がん・食道がんなどの予防効果も分かってきました。
また、すでに掛かってしまった胃がんの進行を緩やかにする効果も発見されています。
さらに、ビタミンEには脳卒中予防効果も。血管が受けるダメージを防いで血管の健康を保ち、血液や血管が原因で起こる心臓病といった生活習慣病を防いでくれるのです。
生活習慣病は偏った食事や運動不足、喫煙習慣なども関わっています。これらの習慣は血管にダメージを与えてしまうため、血管がダメージを受けて血液が行渡らなくなると、血液に含まれる栄養素や酸素が細胞に届かなくなります。
そうなると身体にさまざまな症状が出てくることに。日頃からビタミンEを含む食品を摂って生活習慣病の予防に役立てましょう。

組み合わせの良い他の栄養素

ゴマリグナン

ゴマリグナンとビタミンEを同時に摂取すると、体内のビタミンEの濃度が高まり、ビタミンEの分解を阻止してくれる作用があると報告されています。
ゴマリグナンとは、ごまの中に含まれているリグナン物質で、ごま油の酸化を抑制している成分として知られています。その効果の通り、人間の体の中では老化防止効果を発揮してくれるため、アンチエイジングや皮膚障害の改善に効果的な成分です。
ごまの中には、ビタミンEであるγ-トコフェロールとゴマリグナンが両方含まれていますが、元来、γ-トコフェロールは体内での働きがよくありません。ただし、ゴマリグナンはγ-トコフェロールの濃度を高める働きを持つため、ゴマ由来のγ-トコフェロールのみは体内で高い効果を発揮することがわかっています。
ごまには血圧降下作用を持つセサミンも含まれており、脳梗塞予防にも高い効果が期待できるでしょう。

ビタミンC

ビタミンCは、ビタミンEと共に高い抗酸化作用を持っていることで知られます。ビタミンEとビタミンCを同時に摂取すると、相乗効果によって抗酸化作用と持続性が更に高まるため、単独で摂取するよりも、セットでの摂取がおすすめです。
ビタミンEとビタミンCを同時に多く含んでいる食品は少ないため、ビタミンC含有量が多い緑黄色野菜のサラダに、ビタミンD含有量が多いアーモンドやピーナッツのドレッシングをかけるなど、料理に工夫をしたほうが摂取しやすくなるでしょう。

油脂

ビタミンEは油脂と同時に摂取することで、体内での吸収率を高めることができます。ビタミンEは脂溶性のビタミンなので、油に溶け出す性質があるからです。脂溶性のビタミンには、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンKが含まれます。
そのため、これらのビタミンを含有する食品を調理をする際には、油炒めやソテーなどの油を使った調理法を用いると効率よく摂取できるでしょう。
ただし、脳梗塞を予防するためには、油脂の使いすぎには注意が必要です。カロリーの摂りすぎで肥満になるリスクが高まる上に、動脈硬化や脂質異常症の原因にもなるため、コレステロールの少ない油脂などを選んでください。

組み合わせの悪い他の栄養素

ビタミンEと組み合わせが悪い栄養素は特に報告されていません。鉄との同時摂取で抗酸化作用が低下するという情報もありましたが、この両者の相関について、科学的な検証が行われたエビデンスは見つかりませんでした。
相性が悪い栄養素も特に存在せず、過剰摂取による副作用の報告もなされていないため、安心して摂取できる栄養素です。

ビタミンEを摂るとなぜ脳梗塞が予防できるのか

脳梗塞は脳の血管が血栓によって血流が妨げられることで発生します。血栓はコレステロールや血小板、白血球などの物質が塊となって剥がれ落ちたもの。脳梗塞を予防するには血管を柔軟に保ち、血栓ができにくい状態にする必要があります。血管が受けるダメージをガードして血栓を防いでくれるのがビタミンEです。
ビタミンEには血管を拡張して血の流れを良くする効果があります。血流が促進されると、血行不良が原因で起こる頭痛や冷え性、肩こりなどさまざまな症状が改善されるのです。脳の血流も良くなるため、血管が詰まることで発生する脳梗塞の予防にもなります。
ビタミンEはバランスの良い食事を摂っていれば不足することはありません。しかし、偏った食事や喫煙習慣など、不健康な生活を続けると不足してしまいます。ビタミンEが不足すると血管や細胞へのダメージを負いやすくなり、脳梗塞のほか感覚障害や神経症状を招く原因に。適切な量のビタミンEを摂取するようにしましょう。
1日に必要なビタミンEの量は成人男性で6.5mg、成人女性で6mg。食品に換算するとアーモンド100gあたり、31.0mg、ヘーゼルナッツ100gあたり17.8mgになります。しかし、こららの食品を毎日取るのは大変です。手軽に取るなら日頃の食事にプラスして、サプリメントや栄養補助食品などを摂るとよいでしょう。

1日の摂取量の目安

ビタミンEの1日の摂取目安量は、「血液中のα-トコフェロール濃度が12µmol/Lに保たれる量」から算出されています。算出された摂取目安量は性別や年齢、状態によって細かく分かれており、次の通りです。

  • 0~5ヶ月:3.0mg
  • 6~11ヶ月:3.5mg
  • 小児・成人男性:7.0mg
  • 小児・成人女性:6.5mg
  • 妊娠中の方:6.5mg
  • 授乳中の方:9.5mg

出典:厚生労働省『(PDF)5. 1. 3.ビタミン E』

小児・成人の摂取目安量は、18~29歳の方向けに設定されているものですが、小児では目安量が設定されていないため、成人と同じ量で良いとされています。また、30歳以上の方であっても、年齢によって必要なビタミンEの量が変化するわけではないので成人と同量です。
妊娠中の女性は成人女性と摂取目安量は変わりませんが、授乳中の女性に限っては、乳幼児が必要とする3.0mg分を上乗せして摂取するべきだと推奨されています。

食品中のビタミンE含有量

ビタミンEを食品から摂取する場合、4つのトコフェロールと、4つのトコトリエノールが体内に入った後、ビタミンEとして吸収されます。そのため、食品中ではビタミンEの含有量ではなく、トコフェロールかトコトリエノールの含有量として算出される仕組みです。
トコフェロールとトコトリエノールの中でも、最も優先的に処理されるのが「α-トコフェロール」であるため、α-トコフェロールを多く含む食品の含有量についてご紹介します。

  • 煎茶:64.9mg
  • ひまわり油:38.7mg
  • アーモンド(乾):30.3mg
  • とうがらし(乾):29.8mg
  • アーモンド(煎):28.8mg

出典:文部科学省 食品成分データベース『食品成分ランキング α-トコフェロール』

上記の含有量は、食品100g中に含まれるα-トコフェロールの量なので、このようにしてみると、摂取は非常に簡単であり、むしろ過剰摂取になってしまうように思われるでしょう。

ビタミンEの体内での吸収率について

上の項目でご紹介した食品中のα-トコフェロール含有量は非常に多いですが、食品中のα-トコフェロールが、全てビタミンEとして吸収されるわけではありません。
実は、ビタミンEの吸収率についてははっきりとしておらず、約51~86%が平均的だろうと考えられていましたが、21%か29%である可能性もあるとされています。そのため、1日の摂取目安量を達成するための食品量も、一概に言うことができません。
そのため、食品中にα-トコフェロールは多く含まれていますが、過剰摂取になることはほとんどないと言われています。

ビタミンEの摂取上限値と過剰摂取について

食品中に多く含まれているビタミンEですが、摂取上限値はしっかりと定められており、1日に男性で800mg、女性で650mgまでであれば健康に害がないと言われています。また、アメリカの摂取上限値はサプリメントとして1,000mgで、イギリスでは540mgが上限となっています。
ビタミンEの摂取上限量はかなり多めなので、この数値を超えてしまうことは通常ではないと考えられます。
更に、ビタミンEの投与量を変化させて行われた実験でも、大量に摂取した際の副作用は認められていないため、過剰摂取になっても大きな健康リスクはないでしょう。

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献

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