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脳梗塞・脳卒中の後遺症を克服するリハビリ3ステップ

脳梗塞を発症した患者さんが、必ず通らなければならない道。それがダメージを受けた身体の機能回復を目指して行うリハビリテーションです。

脳梗塞の治療を行いながら集中治療室で始められ、病室に戻ってからはベッドの上でのリハビリ。このリハビリは退院後も続く長い道のりですが、リハビリが上手く進むか進まないかが、その後の生活の質を左右する重要なポイントになっていきます。

このページでは、脳梗塞発症後のリハビリテーションについて基礎知識から心構えまでを学んでいきましょう。

発症直後から退院後までリハビリには3つの段階がある

急性期のリハビリ

起き上がることができない臥床期から離床期を経て、車いすで移動したり歩行訓練なども行います。

  • 手足の関節を動かす(関節可動域運動)
  • 筋肉をつける運動(筋力増強運動)
  • ベッドから体を起こす(頭部挙上負荷)
  • 平行棒内歩行訓練 など

脳梗塞のリハビリ【急性期】について詳しく見る >

回復期のリハビリ

麻痺のある手足を動かして回復を促す運動を続けながら、日常で行う動作を1人でできるように訓練していきます。

  • 杖歩行訓練
  • 更衣動作の訓練
  • サンディングやペグボードなどの作業療法
  • 利き手交換 など

脳梗塞のリハビリ【回復期】について詳しく見る >

維持期(生活期)のリハビリ

発症してから半年ほどすると、急激な機能回復が見られなくなり、維持期に入ります。これまでに回復した機能を維持しながら、日常生活を送る訓練をしていきます。

  • 更衣や食事などの動作訓練
  • 言語聴覚士による言語訓練
  • 絵画を書いたり手芸をしたりする作業療法 など

脳梗塞のリハビリ【維持期】について詳しく見る >

脳梗塞のリハビリ体験談から学ぶ

発症すると、半身麻痺や言語障害が残り、その後の生活に支障をきたす可能性がある脳梗塞。ここでは、そんな障を克服するために、リハビリに取り組んだ方々の体験談も紹介しています。ぜひ参考にしてください。

脳梗塞のリハビリ体験談を詳しく見る >

リハビリテーションに取り組む
姿勢や心構えについて

リハビリには、単純に運動をして体の機能を回復させるという目的があるだけではなく、病気や障害を受け入れ、日常の中で共存しながら妥協点を見いだしていく過程でもあります。取り組む姿勢や心構えによって、回復の早さや到達点が変わって来ることもありますから、リハビリに対する考え方についてまとめておきましょう。

リハビリを成功させるためのポイント

脳梗塞で脳にダメージを受けた後に現れる手足の麻痺は、病気やケガなどで手足が欠落した場合と違い、リハビリを続けていればきっと機能が回復するのではないかと信じてしまいがち。しかし、元の状態まで回復する方もいれば、そうではない方もいるのが事実です。

リハビリをがんばって機能回復が実現した場合は良いのですが、発症後半年ほど過ぎるころには回復が見られなくなり、その時点で残っている症状と共に生活していくことになります。その事実を受け入れ、病気と共に生きていく心構えと動き方のテクニックを体得できるかどうかが、発症後の生活を左右します。

リハビリを行っていく過程で、本人はもちろんですが、周りの家族や介助者も一緒に病気を受け入れ、共に生きていく心構えを作っていきましょう。

リハビリはチームで取り組む

リハビリは患者本人だけの努力で成り立つものではありません。患者やその家族を支えるのは、発症直後の治療を担当する医師、看護師から始まり、急性期や回復期のリハビリを担当する理学療法士や作業療法士、言語聴覚士など、様々な分野の専門家たち。そんな専門家が患者を回復させるためにチームを組んで連携、協力してリハビリに取り組んでいくのです。

さらには、薬剤師や栄養士、ソーシャルワーカーなどが関わることもあります。自宅へ帰ればご近所の方や友人に支えてもらうこともあるかもしれません。患者やその家族は、チームの中心にいるわけですから、病気や後遺症に立ち向かう上で不安を感じたら、いつでも専門家とチームのスタッフにアドバイスやサポートを求めることができます。

このようにチームで支え合いながら戦っていく意識を持つことが、病気を乗り越えて豊かに生活するためのポイントとなるのです。

行う目的や効果など
リハビリテーションの基礎知識

リハビリを行わなければならない目的や、行う時期、場所などの基本的な情報を確認しましょう。

リハビリを行う目的と効果

脳梗塞を発症した後、ほとんどのケースで手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ると言われています。少しでも早く元の機能を回復するよう、または日常生活に戻れるように行うのがリハビリテーション。発症した直後の急性期と病状が落ち着いた維持期とでは若干異なりますが、大きく分けると以下のような2つの目的があります。

  • 失われた機能を回復させる
  • 残った機能を使って日常生活に戻る

手足の麻痺などの障害は、時間の経過とともに回復することもありますが、早期から関節などを動かすことで廃用性症候群を防ぐこともできますし、回復を早めることも可能になります。

リハビリを行う時期、期間

発症直後に脳梗塞の治療を行っているときから、リハビリをスタートさせます。ベッドで安静にしている時でも、手や足の関節を動かしたりする軽いリハビリが可能。発症から半年くらいまでが急性期から回復期と呼ばれて、リハビリの効果が最も表れやすい時期です。その後は、生活の中で長期間にわたってリハビリを取り入れていくことになります。

リハビリを行う場所

急性期は脳梗塞の治療を行った病院で、回復期になるとリハビリに特化した病院や施設へ転院したり、自宅から通所しながらリハビリを続けます。

リハビリ中の食事と必要な栄養

脳梗塞や脳卒中のリハビリ中には、食事に対する意欲が薄れる、食事自体がしにくいなどの理由で、合併症として「栄養障害」を引き起こす可能性もあります。そのため、必要な栄養素がしっかりと摂れるよう、食事の摂り方にも気をつけなければなりません。

また、摂取する栄養素によって回復が早くなる可能性もあるので、積極的に摂取したい栄養素についても知っておきましょう。

リハビリ中に摂取したい栄養素

リハビリ中に摂取したい栄養素をみていきましょう。

たんぱく質

リハビリ中に積極的に摂取したい栄養素の第一はたんぱく質です。脳梗塞や脳卒中のリハビリ中は、「サルコペニア」という筋肉量減少が起こりやすい時期であり、特に片方に麻痺が残っている場合、麻痺した側の筋肉が極端に少なくなってしまいます。

たんぱく質を豊富に摂取することは、サルコペニアの予防にも役立ち、後遺症の回復にも役立つとされています。また、後の死亡率を減少させるとも言われているので、飲み込みやすい豆腐やプロテイン飲料、サプリメントなどで補うことがおすすめです。

食物繊維

食物繊維は体内で胆汁酸という消化液を吸着して排出させますが、胆汁酸はコレステロールから生成されるものです。体内の胆汁酸が少なくなると、新しい胆汁酸が生成するために血中のコレステロールが使われるため、コレステロールが減少します。

動脈硬化は血中のコレステロールによって引き起こされるため、食物繊維を摂取すると動脈硬化予防に繋がり、脳梗塞や脳卒中の再発防止に効果的です。

後遺症に合わせた食事の摂り方

脳梗塞や脳卒中で後遺症が残った場合、食事自体を苦痛に感じてしまう方も多いようです。

手に麻痺があるため箸やスプーンが持てない、上手く飲み込めないため食事をこぼしてしまうなどの後遺症は、本人にとってはとても辛いことで、そのストレスが原因でうつ病を発症してしまうことも考えられます。

そして、精神面への障害が起きれば、摂食障害などを併発する可能性もあるため、更に栄養状態は悪化する一方。そうならないためにも、後遺症に併せて次のように工夫してください。

「嚥下障害」は食事の質を上げ、栄養補助食品を利用

嚥下障害があると食事への意欲低下と共に、嚥下性肺炎などのリスクも高まります。硬くて食べにくい果物や生野菜、喉通りの悪いカステラやパン、吸引力が必要になる麺類などは避けましょう。

嚥下障害は訓練によって改善することができるため、プリン程度の柔らかい食べ物から始め、少しずつ色々なものに挑戦していきます。

また、嚥下障害が改善するまでは食べられるものが限られるので、栄養を補助してくれる食べ物や飲み物を使ってください。

「うつ」の症状がある場合は好きな食べ物を多めに

後遺症が残ったことが原因で、うつ病になってしまう方もいます。この場合、食事への意欲がなくなり、全く食べ物を口にしなくなる可能性もあるでしょう。

ですが、うつ状態で食事ができないのは精神的なことが原因なので、本人の好きな物を中心に食事を作ることで、食事への意欲を高めることが一番です。

食べる量が極端に少ない場合は、高カロリーの食事を基本として、少しの量でもエネルギーを摂取できるようにします。

「麻痺」がある場合は訓練を兼ねて自助具を利用

麻痺が残っているだけであれば、本人としては食事を摂りたいはずです。リハビリの際にも説明があると思いますが、「自助具」を使えば麻痺した手でも自分で食事が楽しめます。

また、茶碗が持てないようであれば、持てるように訓練をすることも大切ですが、訓練を厳しくしすぎて食事への意欲が減退してしまうことは問題です。持たなくても食べられるように滑り止めマットを敷く、茶碗の種類を選ぶなどの工夫も大切でしょう。

リハビリ中に控えたい栄養

リハビリ中は様々な栄養素をバランス良く摂ることが大切ですが、次のような栄養素は取らないように気をつけてください。

ビタミンKを含む食品

ビタミンKを多く含んでいる食品は、納豆、クロレラ、青汁、モロヘイヤなどです。体に良いと言われる食品ばかりですが、ビタミンKは「ワルファリン」という薬の効果を減退させます。

ワルファリンは、脳梗塞のリハビリ中に投与されるもので、血液をサラサラにして血栓ができないようにする薬です。

上で挙げた食品の中でも、特に納豆は長時間に渡って体内でビタミンKを作り続けるため、脳梗塞再発のリスクを格段に上昇させます。

ナトリウム・カルシウム

ナトリウムは塩分から摂取される栄養素ですが、塩分が血圧を上昇させることは有名です。塩分を摂ると交感神経が活発になり、血管を収縮させて血圧を上昇させます。

また、カルシウムは骨の元となるので適度に摂取したいところですが、サプリメントなどで摂り過ぎると、血管壁に沈着して血管を狭くする原因となります。自然な食品からのみ摂取している場合、過剰摂取になる可能性は低いでしょう。

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献