脳梗塞の前兆と初期症状
脳梗塞が発症する前に見られる初期症状や前兆、病院にかかるタイミングなどを解説しています。また、40代では3人に1人が発症している「かくれ脳梗塞」の特徴と危険性についても要チェックです。
脳梗塞の初期症状
「一過性脳虚血発作(TIA)」とは
脳梗塞が発症する前には、以下のような初期症状が見られることがあります。
脳梗塞の治療は時間がすべて。こうした前触れにいち早く気づくことで、重症化を未然に防ぐことが可能です。
- 口の動きの異変・ろれつが回らなくなる
(構音障害:社会的にも年齢的にも、正しく構音できるはずの音を誤って構音してしまう病態。構音検査を行い、構音訓練を行う) - 言葉が出なくなる
(失語症:言語障害のひとつ。脳の言語中枢が何らかの損傷を受けることによって、言語を操る能力に障害が残った状態) - 口をうまく閉められなくなる
- 顔に歪みが出る
(片側顔面麻痺:たまに自分の意思とは関係なく、片側の顔の筋肉がピクピクと痙攣したり、引きつったりする症状) - 片方の手足に力が入らない・痺れが起こる
(片麻痺:脳の病変などにより、からだの右半分あるいは左半分の機能が失われ、自分の思い通りに動かすことができなくなる症状) - 片方の目に膜がかかったように見えなくなる
(一過性黒内障:片方の目だけが急激に視力の低下を引き起こし、そのような状態が数秒から数分にわたって持続するような症状) - 視野が狭くなる
- 目の焦点が合わなくなる
- 物が二重・三重になって見える
- 人の言うことがうまく理解できない
- 思ったように文字が書けない
これらの症状は一過性脳虚血発作(TIA/Transient<一過性の>Ischemic<血流が乏しくなる>Attack<発作>)といい、脳の血液の流れが一時的に悪くなり、血栓が詰まってしまっている状態です。ただ、血栓はすぐに溶けて血流が正常に戻るため、通常は2~30分、遅くても24時間以内には症状が消えます[注1]。
一過性の症状のため、重要視しない人も多いですが、これらは脳梗塞の初期症状ともいえ、発症を未然に防ぐ最後のチャンス。
なぜなら、そのまま放置しておくと15~20%の人が、3ヵ月以内に脳梗塞を発症、そのうちの半数は数日以内(48時間以内)に脳梗塞が発症する[注2]といわれているからです。
とくに、身体の半分に起こる異常(麻痺・しびれ・歪みなど)は脳梗塞に発展する可能性が非常に高いと考えられています。本人・家族が知識をしっかりと持ち、一刻も早く医療機関を受診するようにしてください。
一過性脳虚血発作(TIA)のチェック方法「FAST」
この一過性脳虚血発作(TIA)のチェック方法として「FAST」と呼ばれる標語があります。「FAST」とはFace(顔)Arm(腕)Speech(言葉)Time(時間)の頭文字を取ったものです[注3]。
FASTのチェックを行って、どれか1つでも当てはまるものがあれば、すぐにでも(Time)救急車を呼ぶことが推奨されています。
- Face(顔)=顔の麻痺のチェック
満面の笑みを作るように「いー!」と声に出しながら、口角をしっかり上げます。
片方の口角が上がっていなければ、TIAの疑いがあります。 - Arm(腕)=腕の麻痺やしびれのチェック
腕をまっすぐ伸ばし、手のひらを上にして、両腕を肩の高さまで上げます。
そのまま目をつぶり数十秒間、両腕を上げた体勢を保てるかを確認してください。
もし片腕が下がりはじめたら、TIAの可能性があります。 - Speech(言葉)=言葉の異常をチェックする
短い文章を声に出して話すチェック方法です。
「太郎が花子にりんごをあげた」という文章が例文として挙げられていますが、とくに内容は問いません。
短い文章なのに言葉に詰まる、内容がおかしくなっている、ろれつが回っていないなどの状態は、要注意です。 - Time(時間)=すぐに救急車を呼ぶ
脳梗塞の治療は時間との勝負です。
救急車を呼ぶというのは躊躇しがちですが、FASに当てはまったなら、迷わず即座に行動をしてください。
ABCD2スコア
万が一、一過性脳虚血発作(TIA)のFASTチェックに当てはまり、一過性脳虚血発作を引き起こしてしまった場合、その後に脳梗塞を発症する可能性は非常に高いと言えます。
現在、一過性脳虚血発作を引き起こした後に、どれだけの確率で脳梗塞を発症するかということを判断する方法として、「ABCD2スコア」というものが利用されています。一過性脳虚血発作だと診断された後、病院で行うことになるかと思いますが、このスコアについても事前に知っておきましょう。
ABCD2スコアのABCDとは、チェックするべき項目の頭文字を取ったものです。このチェックは次の5つの項目から得点を出し、それの総合点によって脳梗塞リスクを確認します[注1]。
Age(年齢)
61歳以上であれば1点加算される。
Blood pressure(血圧)
最大血圧140mmHg / 最小血圧90mmHgよりも高ければ1点加算される。
Clinical features(臨床的特徴)
半身まひが表れていれば2点加算され、まひの伴わない言語障害で1点加算される。
Duration of symptoms(持続時間)
10~59分の持続で1点加算され、60分以上の持続で2点加算される。
Diabetes(糖尿病)
糖尿病があれば1点加算される。
これらの5つの項目をチェックして、それぞれが基準値よりもかけ離れていればいるほど、脳梗塞を発症するリスクは高くなります。点数と発症リスクについては次の通りです[注7]。
- 0~3点…1.0%
- 4~5点…4.1%
- 6~7点…8.1%
一般的には、ABCD2スコアの点数が3点以上であれば、すぐに入院をして治療を開始するべきだとされています。
日常的に意識をしておきたい脳梗塞の前兆
一過性脳虚血発作(TIA)のように、明確な初期症状として表れていない場合でも、脳梗塞の前兆ともいえる症状が現れている場合[注4]もあります。
以下のような症状が日常的に出ている場合は、脳の血管に何かしらの前兆が出始めている可能性が高いため、一度医療機関で精密検査を受けることをおすすめします。
- 原因不明の頭痛や肩こりが、突然発生する
原因不明の頭痛が発症する原因は、「解離性脳動脈瘤」ができている可能性があるからです。脳動脈瘤と言えば、くも膜下出血の原因となる血管の瘤として有名ですが、解離性脳動脈瘤が破裂して、脳梗塞が引き起こされる可能性もあります。
脳動脈瘤が破裂して頭痛が起きるのは、脳内にある保護膜が痛みを感じる機能を持っているからです。解離性脳動脈瘤が破裂して脳の中に出血が広がると、その出血が保護膜を刺激して、強い頭痛を感じませます。
また、脳梗塞の前兆として肩こりが発生する原因は、血液が肩に通っている神経を圧迫することです。通常であれば、心臓から頭部に流れた血液は、体の中を通ってまた心臓に戻りますが、頭部の血管が血栓で詰まると、血液はそこで止まってしまいます。すると、血管周辺の神経は溜まった血液によって圧迫されて、肩こりを起こしたような錯覚に陥ります。
脳梗塞で実際に肩こりが起きるわけではありませんが、神経への圧迫を脳が「肩こりである」と認識して、肩こりのような症状が引き起こされるのです。 - めまいや耳鳴り、手足のしびれ、震えなどの症状が起こりやすい
「硬膜動静脈瘻」という状態になっていると、耳鳴りが起きた後に脳梗塞を発症する可能性があります。硬膜動静脈瘻は、硬膜という頭蓋骨の後ろにある部分で、動脈から静脈に直接血液が流れるようになってしまった状態です。
この場合、静脈に血液が流れ込む際に雑音が入るので、耳鳴りと勘違いする可能性があります。そして、硬膜動静脈瘻になると静脈からの血液の逆流が起きやすくなり、血管が腫れ、脳梗塞を引き起こす場合があるのです。
手足にふるえやしびれが出る原因は、脳内の血管が詰まった部位によって、手足の感覚を司る神経が損傷されることです。手足の感覚を司る神経が通っているのは、脳の中の「延髄」という場所の近くです。
この部分で脳梗塞が起きた場合、感覚神経にダメージが与えられ、ふるえやしびれなどが現れます。また、半規管や耳石器などから得た感覚情報を処理するのは脳幹や小脳であるため、その部分にダメージが与えられるとめまいが引き起こされます。 - 歩き方がフラフラしていて、障害物がないのに躓く
歩き方がフラフラする、躓くなどの症状は、足の運動機能を司っている「運動神経」に損傷が起きていると考えられます。また、それに加え、めまいのために起きている可能性もあるでしょう。
運動神経は、ふるえやしびれの項目でご紹介した感覚神経の近くを通っており、より「延髄」に近い部分にあります。延髄よりも上の部分で脳梗塞が起きた場合は、運動神経に障害が起きる場合が多く、そのためにふらつきや躓きが引き起こされます。
延髄の機能の一部として、「前庭神経核」という部分がありますが、前庭神経核は体の平衡感覚を調整している部分です。前庭神経核に障害が起きる「急性前庭症候群」では、体の不安定性やめまいが症状として現れますが、この疾患は約79%が脳梗塞によって引き起こされると言われます。ふらつきや躓くなどの症状は、脳梗塞によって急逝前庭症候群になっている可能性があるでしょう。
- 階段や段差があるところで、片方の足がよく引っかかる
段差で片方の足が引っかかるという症状は、いわば軽度の片麻痺が起きている状態だと考えられます。躓きと同じく、運動神経と感覚神経にダメージが与えられ、足の感覚が鈍ることが原因でしょう。運動神経と感覚神経のどちらにも損傷がある場合、麻痺に加えて感覚の鈍化やしびれなどが現れるため、足の動きをコントロールしにくくなります。
また、脳の大脳皮質にある「一次運動野」という部分は、筋肉の運動を支配しているとされています。運動野は様々な筋肉の収縮を担当しているため、脳梗塞によって運動野に損傷があった場合、「運動神経や感覚神経は機能しているが筋肉がうまく機能していない」という状態になることも考えられます。
一次運動野から発せられた信号は、感覚や運動の情報を処理する脳幹に伝えられてから、初めて運動として成り立ちます。そのため、一時運動野か脳幹のどちらかに損傷があると、片方の足だけうまく動かせないという状態になるでしょう。 - 指先が思うように動かなくなってきた
指先の細かな動きを実現しているのは、一般的に「大脳皮質」だとされています。上の項目でご紹介したように、大脳皮質にある「一次運動野」は、指先の動きの制御も行っているのです。そのため、大脳皮質に損傷があった場合に、指先が動かしにくい状態になりますが、その他にも「脊髄神経経路」に障害が起きている可能性も考えられます。
脊髄神経経路は、指先の複雑な動きを実現させている神経です。そのため、脳から頚髄にかけての部分で脳梗塞が発症すると、脊髄神経経路に損傷が与えられて、指先を細かく動かせなくなることがあります。
その他、耳鳴りの項目でお話ししたことと同様に、「脊髄硬膜動静脈瘻」になると、後頭部と脊髄を包んでいる硬膜で血管に異常が起き、静脈から動脈へと血液が逆流し、血管が腫れることで脳梗塞を引き起こす場合もあります。この場合も、脊髄の周辺で脳梗塞を発症することになるので、脊髄神経経路が侵されてしまう可能性は高いでしょう。
- 字が汚くなったといわれる
「文字が汚くなった」という症状は、「失書」という症状であり、脳の中でも、中前頭回後部、上頭頂小葉、側頭葉後下部、左角回から側頭葉のいずれかで脳梗塞が起きたときに、よく見られる症状だとされています。
特に、「上頭頂小葉」という部分は頭頂葉に位置していますが、頭頂葉は「文字の美しさ」を司っている部分です。頭頂葉にダメージが及ぶと、書く文字の乱れが出てくると言われています。
その他、初めにご紹介した「中前頭回」は前頭葉に位置する部位で、「エクスナーの書字中枢」とも呼ばれています。その名の通り、文字を書くための能力を有していますが、この部分に損傷があると、文字の置き換えがあるものの文字が汚くなる可能性は低いとされます。
そして、側頭葉に位置する「側頭葉後下部」と「左角回から側頭葉」は言語機能を司っている部分で、特に漢字を読み書きする能力に対して強く働くと言われています。そのため、漢字のみが書けない、書くことが下手になった、という場合は、側頭葉部分で脳梗塞が起きている可能性があるでしょう。 - 簡単な計算が咄嗟にできないことが増えた
脳梗塞により計算ができなくなるという症状は、脳梗塞で血流が阻害されたことで、脳の計算を司る機能にダメージが与えられたことが原因ですが、どの部位と特定することはできません。
その理由は、例え簡単な計算であったとしても、「計算をする」ということ自体が非常に高次な能力だからです。計算をするということは、脳のあらゆる部位を使用して、様々な働きを応用しているということになります。
そのため、「計算ができなくなる」という症状は、後頭葉、側頭葉、前頭葉、頭頂葉など、あらゆる部位の脳梗塞で現れる可能性があります。これらの脳全体のネットワークによって計算が行われているので、どこか一か所でも障害が発生すると、計算能力が低下するのです。
特に、前頭葉や頭頂葉などで脳梗塞が起きた場合は、計算のしにくさに加えて、文字の書きにくさや左右が認識できないといった症状が現れ、「ゲルストマン症候群」という状態になる場合もあります。 - 物忘れが多くなった
脳梗塞の前兆である一過性脳虚血発作では、「物忘れ」のみが症状として現れる場合もあります。物忘れは「高次脳機能障害」のひとつであり、運動神経の麻痺や失語などの言語障害と併発されないことも多いそうです。その理由は、脳の中で記憶を司っている部分が、これらの機能とは別の場所にあるからです。
記憶という能力は、「海馬、脳弓、乳頭体、視床前核、帯状束、海馬」からなる回路で実現していますが、この回路は脳の内側にあります。それに対して、運動や言語を司る部分は脳の外側になるため、脳の内側で脳梗塞が起きた場合は、「言語障害や麻痺がないのに物忘れだけが目立ってきた」という状態になります。
この回路は特に、直近に起きた出来事を記憶する働きをするため、最近の出来事だけ覚えていない、新しいことを覚えられない、といった症状として現れてきます。また、脳梗塞や一過性脳虚血発作では、ある一定期間の記憶が全くない場合もあり、このような症状は「一過性全健忘」と呼ばれます。 - 顔や唇がしびれていると感じる時がある
一過性脳虚血発作のチェック法である「FAST」でもご紹介したように、脳梗塞を発症すると、顔に症状が現れる可能性が高いとされています。その理由は、脳の一部である「視床」部分で脳梗塞を発症し、顔の感覚神経にダメージが与えられ、神経麻痺が起きるからです。
顔の感覚麻痺は、特に口の周辺や唇で起きることが多いと言われていますが、それは、他の皮膚と比較して、口の周りの末梢神経に感覚受容器がたくさん存在しているからだとされます。
顔や唇のしびれで特に注意した方が良いことは、しびれが起きている半身と同じ方の指に、同じようにしびれが感じられた場合です。「視床」には顔の感覚神経がありますが、すぐ近くには手の感覚神経も存在しています。
つまり、同じ半身の顔と指にしびれが感じられるという場合は、反対側の方向の視床で、脳梗塞が発症していることになるのです。手と口周辺にしびれが現れるこの症状は、「手口感覚症候群」と呼ばれています。 - ろれつが回りにくくなった
脳梗塞の症状で「ろれつが回らない」という状態は、「運動障害性構音障害」、または「麻痺性構音障害」と呼ばれます。言葉を発音する機能、発声する機能については、「中枢神経」によって制御されているので、中枢神経に障害が起きるとろれつが回らなくなります。
中枢神経による発音や発声は、脳内の様々な部分が相互に働き合って実現しているもので、前頭葉にある言語野、大脳皮質にある感覚野、小脳、大脳にある中心前回下部などがその機能を果たしています。そのため、これらの回路の中のどこかで脳梗塞が発生すれば、ろれつが回らない状態になるのです。
特に、小脳部分で脳梗塞が発生した場合は、発音リズムよりも強弱の付け方が目立つようになり、発音が急に強くなる場合や、反対に強弱が全くない話し方をするなどの症状が顕著となります。また、中脳部分だけに原因がある「中脳梗塞」と呼ばれる脳梗塞では、構音障害が起きやすいと言われています。 - 飲み物や食べ物が飲み込みにくく感じる
食べ物が飲み込みにくくなるという症状は、「嚥下(えんげ)障害」と呼ばれています。脳梗塞の前兆として嚥下障害が起きる理由は、「延髄」という部分で脳梗塞が発症し、食べ物を飲み込むときの情報が脳に伝えられなくなるからです。
「食べ物を飲み込む」という機能は、食べ物が喉を通ったときに、「上喉頭神経」から「延髄」へと情報が伝えられることによって実現します。ですが、延髄の神経回路に障害が起きると、その信号が伝わるのが遅くなるため、食べ物をうまく呑み込めなくなります。
そのため、脳の中でも延髄、橋、中脳、間脳を含む脳幹で脳梗塞が起きた場合や、多発性脳梗塞、広範囲脳梗塞の場合に嚥下障害が起きやすくなります。延髄で起きる「延髄梗塞」には、延髄外梗塞と延髄内梗塞の2種類がありますが、延髄外梗塞では、延髄の下の方にある「疑核」という部分に障害が発生する場合でも、嚥下障害が引き起こされます。疑核は、喉の筋肉の動きを制御している部分で、脳梗塞患者で疑核にダメージがある例では、非常に高い確率で嚥下障害が起きるそうです。
- 痰がからんだり、むせこむことが増えた
痰がからむ、むせるという症状が前兆として現れる場合は」、「舌圧」が低下して、舌をうまく使えなくなっていると考えられます。唾液を飲み込む、痰を吐き出すなどの行為は、舌がうまく動いてその機能を果たしているのですが、舌圧が低下すると舌をうまく動かすことができなくなります。
舌圧の低下は、脳梗塞の前兆として「嚥下障害」が引き起こされるときに特に頻繁に現れ、手足の麻痺が見られる場合は、麻痺している側の舌圧が低くなるとされています。
舌圧の低下は、先にご紹介した嚥下障害の原因にもなりますが、嚥下障害が起きていない場合でも、舌圧が低下している可能性があります。その場合は、食べ物の飲み込みにくさを感じないものの、むせる、痰が絡みやすくなるなどの症状として現れるでしょう。また、次でご紹介しますが、声帯を動かすための神経に障害が起きていて、声帯に隙間ができることでもむせやすくなります。
- 声がうまく出ないと感じることがある
声が出せなくなるという症状は、脳梗塞による「運動の調節障害」が進行していると考えられます。発声するには、唇や舌、声帯を動かす必要がありますが、これらの器官の中のどこかに麻痺が生じていた場合に起きる症状です。この症状は「声帯麻痺」と呼ばれており、主に「反回神経」が障害を受けている際に現れます。
脳の中にある反回神経の中の一つに、「迷走神経」という神経があります。この迷走神経は、喉の運動を司る神経として、声帯を運動させる役割を担っているのです。迷走神経にダメージが及んで神経麻痺が起きた場合、声帯の片方のみに隙間が開き、うまく声を出せなくなる場合があります。
声帯に隙間が開いた場合、水分や唾液が隙間に入りやすくなり、先にご紹介した「むせやすくなる」という症状に繋がる可能性もあるでしょう。また、反対に声帯が隙間のない状態で麻痺が起きると、呼吸がしにくくなるという症状が引き起こされます。
夏は特に注意!脳梗塞と熱中症の症状の違いは?
脳梗塞の前兆は上記で説明した通りですが、 これと似た症状を持つのが熱中症です。
熱中症の症状も、脳梗塞の前兆と同じく、 めまいや頭痛、ふらつきやしびれといったもの。 そのため、熱中症だと思っていたら、脳梗塞だった ということも少なくありません。 では、どこで脳梗塞と判断するのか。
脳梗塞の場合、麻痺症状が出ている可能性があるため、 両手を上に上げて、どちらかが上がらなくなっている場合は、 脳梗塞を疑うようにしましょう。
脳梗塞の前兆が感じられたら
ご紹介してきたように、脳梗塞の前兆症状は非常に多く、梗塞が起きている部位によって様々です。ですが、どの症状が現れていたとしても、共通して言えることは、そのまま放置すれば重篤な脳梗塞に発展して、重症化する可能性が高いということでしょう。
そのため、脳梗塞の前兆が感じられた場合には、例え小さな症状であっても、専門の医療機関を受診することが大切です。
ただし、実際に脳梗塞ができておらず、一過性脳虚血発作の症状として現れてきた場合もあります。その場合は、医療機関を受診しても病巣が見つかりません。そのため、症状が現れたときの様子を、医師に詳細に伝えなければ正しい診断がなされなくなってしまいます。
医療機関に行く前にしておきたいこと
一過性脳虚血発作が起きて、既に血栓の詰まりが解消されてしまった場合のことも考えて、引き起こされた症状を正確に、詳しく伝えられるようにしておきましょう。
・症状はどの部位に起きたのか?
・症状が起きていた時間は何分くらいか?
・どの程度の症状が起きたのか?
これらのことを頭の中でまとめてから、すぐに医療機関に行くようにしてください。また、症状が起きた本人は、焦りから正確に覚えていない可能性もあるでしょうから、家族や友人など、症状が起きたときに周りにいた人から詳しく聞くことも大切です。診断の役に立ちそうな情報があれば、全て医師に伝えられるようにしましょう。
脳梗塞の予防をする
脳梗塞の前兆の症状が起きて、診断を受けても脳梗塞が見つからなかった場合は、脳梗塞の予防を始めることをおすすめします。一過性脳虚血発作であったのであれば、そう遠くない将来に脳梗塞を発症する可能性もあるため、出来る限りの予防をしましょう。
高血圧対策、コレステロールのコントロール、禁煙、運動、食生活の見直しなどはもちろんのこと、血液をサラサラにする成分を積極的に摂ることも効果的です。高血圧をすぐに改善することは難しいですが、血液の流れを改善する成分の摂取であれば、その日から脳梗塞予防を始めることができます。
参考:Mindsガイドラインライブラリ:脳梗塞とはどんな病気?Evidenceに基づく日本人脳梗塞患者の医療ガイドライン策定に関する研究班
脳梗塞の症状
脳梗塞は、血流が止まって壊死した脳の部分によってその症状が異なります。
後遺症が残ることも多いため、日常的な予防対策が重要となります。主な症状は以下の通り。
■麻痺
もっとも頻度の多い症状が麻痺。片側の手足・顔面が脱力したり、筋力が低下して片麻痺・半身麻痺となるケースがとくに多く見られます。右脳がダメージを受けた場合は左半身が麻痺、左脳がダメージを受けると右半身に麻痺を負うことになります。
■感覚障害
感覚が鈍くなる、あるいは消失するといった障害のことで、感覚を司る神経がダメージを受けることで発生します。また、感覚を司る神経は、運動神経と経路が同じなため、麻痺に感覚障害が伴うこともあります。慢性期になると痛みを覚えることもあり、日常生活への影響が懸念されます。
■高次脳機能障害
脳がダメージを受けると、記憶・集中力・言語などに障害が起きることがあります。これを高次脳機能障害と呼びます。新しいことが覚えられない・過去を思い出せない・聞いても理解できない・直前の出来事を忘れるなどの症状が起き、日常生活にさまざまな支障をきたします。
■摂食・嚥下障害
食べ物をうまく飲み込むことができなくなる、摂食・嚥下障害。原因の4割が、脳出血や脳梗塞などによる脳血管障害と考えられています。摂食・嚥下に障害が出ると誤嚥(食べ物が気道に入ること)が多くなり、肺炎などの炎症を起こすこともあります。
かくれ脳梗塞に注意
「かくれ脳梗塞」とは、非常に小さな脳梗塞[注5]のこと。MRI検査などで発見されることが多く、40代では3人に1人、50代では2人に1人の割合[注6]でこの症状が認められるとのことです。
かくれ脳梗塞は無症状であることが多く(無症候性脳梗塞)、たとえ症状が合っても短時間で回復してしまうのが特徴。そのため重大な事態だと認識されず、放置されることがほとんどです。
しかし、かくれ脳梗塞を持っている人は「5年以内に約3割の人に大きな発作が起こる」と警告されているため、軽視するのは厳禁です。かくれ脳梗塞は生活習慣病のひとつと心得、普段から脳梗塞の予防に努めることが大切です。
それでは、かくれ脳梗塞を発見するには、一体どのようにすればよいのでしょうか。自覚症状がない以上、自分でかくれ脳梗塞を発見することは難しいように感じるでしょう。
そこでこちらでは、かくれ脳梗塞の原因や、発見するためのチェック方法などをご紹介します。脳梗塞を予防するためにも、ぜひこれらの項目を覚えておいてください。
かくれ脳梗塞の原因とは?
かくれ脳梗塞は脳梗塞であることに間違いなく、正式名称は「無症候性脳梗塞」と言います。そのため、かくれ脳梗塞の原因は、脳梗塞発症の原因と同様です[注8]。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
これらの、3つの危険因子を正しく管理していないことが最大の要因ですが、さらに、次のようなものもかくれ脳梗塞を発症させるリスクを上昇させます[注9]。
- 肥満
- メタボリックシンドローム
- 日常的なストレス
- 心房細動などの心疾患
これらの項目を管理することは、血圧を安定させることと同じように重要なポイントとなるので、生活習慣にも十分配慮する必要があるでしょう。
かくれ脳梗塞のチェック方法
かくれ脳梗塞を発見するためには、MRIやCTでの撮影を行う必要があります。そもそも、かくれ脳梗塞という診断基準は、「症状はないけれど画像診断上は脳梗塞である」ということです[注10]。
かくれ脳梗塞は無自覚であるため、脳ドックなどを行った際に、偶然発見されることがほとんどです。定期的に健康診断や人間ドックを受けている方は、積極的に脳ドックの検診を受けるようにしましょう。
また、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの指摘を受けている場合も、定期的に脳ドックを受けてください。これらの検査が、恐ろしい脳梗塞を未然に防ぐためのポイントとなります。
脚注:参照元サイト
[注2]国立循環器病研究センター:[96] 脳梗塞の"前触れ"- 一過性脳虚血発作とは?-
[注3]日本内科学会講演会:内科医が知っておくべき救急医療 1.脳卒中が疑われたら:峰松 一夫
[注4]脳梗塞リハビリセンター:初期症状
[注6]MINAGIRU-JOURNAL:油断大敵!隠れ脳梗塞のチェック法
[注7]兵庫県立 姫路循環器病センター:一過性脳虚血発作(TIA)の早期受診について
[注9]日本脳卒中学会・日本高血圧学会:(PDF)脳卒中再発防止
[注10](社)日本内科学会:(PDF)無症候性脳梗塞の臨床的意義
脳梗塞の予防に重要なポイント
脳梗塞を予防するためには、危険因子である高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を防ぐことが、もっとも大事なポイントのひとつ。そのためには、栄養バランスのとれた食生活が必須です。
ただ、そんなわかりきったことを言われたところで、すぐにいまの食生活を変えることができないものですよね。一度発症した人が再発予防するのと、脳梗塞を予防するのとでは、どうしても心構えに違いが出てしまいます。
本来は食事や食習慣を根本から見直す必要がありますが、機能性表示食品やトクホなどのサプリや飲料の摂取を習慣化して、脳梗塞や心筋梗塞の予防をするのもひとつの方法ではないかと思います。
いくつかの有効成分を下記ページで紹介していますので、興味のある方は下記ページを要チェック。なかでも酵素の役割には注目していただきたいです。
【脳梗塞の前兆 ケース1】こんな心当たりありませんか?
ある日突然体に異変が起こったけれど、すぐにその異変は消えてしまった…。そんな経験はありませんか?
もしかするとその体の異変は、脳梗塞の前兆症状として現れたのかもしれません。
前兆が現れてから数か月後、突然脳梗塞で倒れるという経験をする方も多いので、次のような症状が現れたら、脳梗塞を発症する前に対策を練ることが大切です。
最初に異変を感じたのは「視界の暗さ」だった
Aさんが最初に感じた異変は、視界が急に真っ暗になったことでした。ある日の午後、家でゆっくりと過ごしていたAさんの視界は突然欠け、目の前が真っ暗になってしまったのです。
そのとき家の中にはAさんしかおらず、視界が真っ暗で歩くこともできなかったため、不安になりながらも「目が疲れているのか」と思って目を閉じました。
そして、5分程経った頃に恐る恐る目を開けてみると、視界の異常はありません。そこにはいつも通りの景色が広がっており、まるで何事もなかったかのようです。
その後も特に体に異変がなかったため、おかしいとは思いつつも、Aさんが病院を受診することはありませんでした。
1週間後の朝、突然現れた「手足の麻痺」と「言語障害」
その後、何事もなかったかのように生活をしていたAさんですが、視界が真っ暗になってから約1週間後、前兆として手足の麻痺を体験することになります。
ある朝、いつも通りに起床したAさんは、ベッドから起きて立ち上がろうとしたとき、足に力が入りにくいことに気が付きました。
ベッド横にあるメガネを取ろうとすると、手にも力が入らず、家族を呼ぼうと思っても上手く発音できません。
しばらくベッドに横になっていたところ、また5分ほどで手足は動くようになり、言葉も普通に発することができるようになりました。
このときもAさんは病院を受診せず、そのままいつも通りの1日を過ごしたのです。
前兆が現れたら発症直前!脳梗塞発症の予防をしよう
視界の不良、手足の麻痺を経験しつつも病院に行かなかったAさんは、その1週間後に脳梗塞を発症させました。
前兆である症状が起きたときに病院に行っていれば、脳梗塞発症は防げたでしょう。
脳梗塞と言えば、突然倒れるというイメージがありますが、このように前兆が現れることは珍しくありません。前兆が現れたら、まずは病院を受診することと、脳梗塞の予防法と改善法を実践することが大切です。
いつ自分の身に降りかかるとも知れない脳梗塞。恐ろしい疾患ではありますが、生活習慣を整えることで予防できるものでもあります。
脳梗塞の予防、動脈硬化の改善のためにも、その対策法を知っておきましょう。
【脳梗塞の前兆 ケース2】生活習慣の乱れはありませんか?
こちらでは、生活習慣の乱れが脳梗塞発症につながった例をご紹介します。この例は、脳梗塞のリスクを確実に高める生活習慣ですが、同じような生活習慣を送っている方は、恐らくたくさんいるでしょう。
毎日の楽しみは「タバコ・飲酒・揚げ物」
Bさんは50代の男性ですが、とにかく脂っこい食事とお酒が大好きです。毎日の楽しみは、家に帰って揚げ物をつまみにしながらビールを飲むこと。
ビールの量もかなり多く、1日に2L近く飲んでしまうことも珍しくありません。
そして、Bさんはヘビースモーカーでもあり、休みの日には1日に2箱ほどのタバコが無くなってしまいます。
さらに、普段から体を動かすこともほとんどなく、なにか運動をしなければと思ってはいましたが、体が太ってしまったため運動も億劫です。
そんな生活をしているせいか、会社の健康診断では、「高血糖・高血圧・高コレステロール」で注意を受けていました。
そのような結果になる理由が、生活習慣にあることはBさんもわかっていましたが、やはり好きなものを我慢することは難しかったのでしょう。
仕事中に突然の「手の痺れ」と「胃の不快感」
そんな生活を続けていたある日、Bさんは仕事中に突然手の痺れを感じました。パソコンのキーボードを触ったところ、指先にびりびりとした感覚が走ったのです。
「漏電しているのか?」と思ったほどの感覚でしたが、すぐにその感覚はなくなってしまいました。
Bさんはそのまま仕事を続けていましたが、2~3時間後、またびりびりした感覚が戻ってきたのです。そしてその時は胃に強い不快感もあり、仕事ができないくらいの状態となったため、Bさんは病院に行きました。
食習慣の改善と脳梗塞の再発予防の関係性について詳しく見る>>
生活習慣の乱れは大敵!脳梗塞リスクを確実に高める
脂っこいものが多い食生活、運動不足、夜型の生活に睡眠不足など…。生活習慣が乱れていることは、脳梗塞の大きな原因となります。
Bさんは前兆症状が現れた時に病院に行ったため、脳梗塞の発症を防ぐことができました。ですが、生活習慣の乱れを整えていれば、ここまで深刻な事態になることはなかったでしょう。
脳梗塞を未然に防ぐためには、どうすれば脳梗塞を予防できるのか、そのための理想的な生活習慣を知り、実践に移していくことが最も大切なことです。
脳梗塞の予防に取り入れられる
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酵素
ドロドロになった血液を浄化
栄養の吸収・分解・排泄に不可欠な「酵素」
食べ物の栄養を分解して吸収しやすいかたちにし、不要なものは排泄する。その役割を担っているのが酵素です。血液が体内を滞りなく循環できるようにサポートする酵素は、脳梗塞や心筋梗塞の予防にもひと役買っています。
そんな脳梗塞発症のリスクを下げてくれるのはどのような酵素なのでしょう。