脳梗塞の予防につながる脳の検査

脳梗塞になると急に意識を失ってしまい、最悪の場合死に至るケースも少なくありません。そんな状況を避けるためにやるべきことは、脳の検査。検査は、脳梗塞のリスクをさけるためにもっとも有効な方法です。最近は、脳ドックなど検査を受けられる病院も増えてきました。ここでは、脳の検査で調べられることや脳ドックで行なわれている検査方法をまとめています。

脳梗塞だけじゃない、脳の画像検査でわかること

脳を検査することで、脳梗塞を発見するだけでなく、脳卒中・脳出血・脳腫瘍などを発見することができます。

ドイツの物理学者ヴィルヘルム・レントゲン氏が1895年にX線を見つけ出し、骨の形状を映し出せるようになりました。20世紀に入ってから、脳内や体内を画像で確認できるCTやMRIなどの検査法が進歩。脳の構造を撮影するだけでなく、脳内で流れている血液の量を確認できる検査を受けることも可能です。

昔は症状が進行してからしか発見できなかった脳の病気が、今は検査することで早期発見できる時代になりました。脳梗塞や脳卒中などのリスクを回避するためには、検査をすることがもっとも確実な方法だと言えます。

脳ドックでの検査が当たり前の時代に

脳梗塞や脳卒中、脳出血などの病気は、まとめて「脳血管疾患」と呼ばれています。脳血管疾患は血管がやぶれたり、つまったりすることで発症する疾患のこと。厚生労働省による人工動態統計月報年計(平成26年度)によると、脳血管疾患は日本人の死因第4位でした。

最近は、脳梗塞や脳卒中などを予防するために、積極的なサポートを行なう自治体が増えてきました。「人間ドックや脳ドックの助成金が受けられる」「脳ドックを受けられる病院を増やす」といった取り組みがその一例です。昔は「脳ドック」というものはあまり浸透していませんでしたが、今では体の状態を検査する「人間ドック」と同じぐらい当たり前になっています。「脳ドック」では、具体的にどのような検査が受けられるのかを以下で詳しくまとめているので、ぜひチェックしてください。

CTによる脳の検査でわかること

脳梗塞・脳卒中といった脳の検査は、この20年間で大きな進歩をとげてきました。そんな脳の検査の進歩に大きなきっかけを与えたのが「CT」です。CTの正式名称は「Computed Tomography」で、日本語に訳すと「コンピュータ断層撮影法」になります。イギリスの電子技術者・ゴッドフリー・ハウンズフィールド氏によってCTは開発されました。

CT機器は、大きな白い筒の形をしているのが特徴です。そのなかに入って、頭を1周するようX線を照射。X線でとらえた情報をコンピュータが処理することで体の断面図が確認できるようになります。特に、脳出血・くも膜下出血などの発見に効果を発揮。CTの写真をみると、出血した箇所は白っぽく見えるので、すぐに体にかくれた病気を発見することができます。

他にも、脳梗塞・心臓・気管支・胸部・腎臓・肝臓などの病気の発見にも優れた検査方法です。

MRIによる脳の検査でわかること

MRIは脳梗塞・脳浮腫・脳出血をはじめ、脊椎・四肢・前立腺・子宮・卵巣の疾患を発見するのに優れています。

MRIは正式名称「Magnetic Resonance Imaging」と呼び、訳すと「磁気共鳴画像診断装置」と言います。MRIもCTと同様に、大きな丸い筒に入って検査を受けます。CTはX線を使用しますが、MRIは強力な磁気の力を使って検査を行なうのが特徴です。

強力な磁力を与えると、人間の細胞を作り出している分子の並びに変化が起こります。その変化をコンピュータで計算して断面写真を作成するのです。

CTは決まった位置からの撮影しかできませんが、MRIは検査の条件によって撮影を変えることができます。写真の色を見えやすい色に変更できるほか、断面写真の角度を変えたりすることも可能です。

MRAによる脳の検査でわかること

MRAの検査方法は、MRIとほとんど変わりません。大きな丸い筒で強力な磁気の力で脳の検査を行ないます。違うのは検査するポイント。MRI検査では、さまざまな角度や方向から脳の断面画像を作成できますが、MRAは、脳の血管だけを映し出します。MRIでおおまかな異常を見つけ出し、MRAでどこから異常が発生しているのかという細かい部分をあぶりだすのです。

MRAは、くも膜下出血のような脳内の血管障害を発見することが可能。「血管がつまっていないか?」「細くなっていないか?」、くも膜下出血の原因となる血管の奇形「動静脈瘤奇形」や動脈のこぶ「動脈瘤」を調べることができます。MRAは磁気を使用するため、ペースメーカーを装着している人は検査をすることができません。

超音波による頚動脈検査(頚動脈エコー)でわかること

人の耳では聞くことのできない高周波を頸動脈にあてて、血流のスピードや血管壁の厚さなどを調べる検査を「頚動脈検査(頚動脈エコー)」と言います。頸動脈とは、大動脈から脳に血流を送り出す血管のこと。頸動脈には、脳へ血液を送りだす「内頸動脈」と顔へ血液を送りだす「外頸動脈」とがあります。

頸動脈エコーの検査でわかる脳の病気は、急激に血液の循環が悪くなって起こる「脳卒中」です。その他に、糖尿病・高血圧・脂質異常症・心臓病・肥満などの症状も調べることができます。超音波を使用している頸動脈エコーは、体に負担がかからないのもポイントです。ベットに横になり、ゼリーを塗った専用機器を頸動脈にあてるだけ。痛みもないので安心して検査を受けられます。「痛みに弱い」「狭いところが苦手」という人におすすめです。

らせんCTによる脳の検査でわかること

従来のCTはスキャン1回ごとに停止させ、寝台の位置を変えてから再度スキャンを行なうという方法で検査をしていました。しかし、らせんCTは寝台が自動的に動き、連続でスキャンを行なうという方法です。切れ目なくスキャンができるので、病変の見逃しが少なくなったのが特徴。隠れた血管や細い血管なども映し出すことができます。らせんCTで検査できる脳疾患は「脳腫瘍」「脳出血」です。他にも、肝臓・肺・胆のう・腎臓・膵臓・膀胱・子宮などを調べることもできます。

心電図検査でわかること

脳梗塞のなかのひとつに「心原性脳塞栓症」というものがあります。心原性脳塞栓症は、心臓にできた血の塊(血栓)がはがれて、動脈をつまらせて起こる脳梗塞のこと。心臓に血栓ができるもっとも多い原因は、「心房細動(しんぼうさいどう)」です。心房は心臓の上半分にあり、静脈とつながっている部分。心房でおきた不整脈のことを心房細動と言います。不整脈を発見するのが「心電図検査」です。不整脈を見つけることで、脳梗塞の発見につなげることができます。

血液・尿検査でわかること

脳ドックでは、MRI・MRA・頸動脈エコー・心電図検査とあわせて血液検査と尿検査も実施します。食生活の乱れ・喫煙・飲酒・ストレスによって、糖尿病や動脈硬化などの病気を引き起こすおそれがあります。これらの病気が影響することで、脳疾患を引き起こすリスクも増加。血液検査や尿検査では、高血糖・脂質異常症・危険因子を見つけることで、脳梗塞のリスクに対する多くの情報をつかむことができます。

脳梗塞発症後に行なう検査

脳梗塞が発症した場合、神経学的検査や一般的な全身状態を検査し、症状の種類や対処法、リハビリテーションの方向性を決定していきます。

■神経学的検査
手足の動きや目の反応・反射などをチェックし、脳神経や中枢神経系に問題があるかどうかを確認する検査。麻痺の有無や場所、意識がある場合は手・指・足の動きや反応、発音状態や舌の動きなどを調べていきます。脳梗塞の疑いが高ければ速やかに頭部CTと臨床検査を実施。今後の治療方法や、リハビリの方向性などを決めていきます。

■全身状態の検査
血液検査・心電図・尿検査・超音波検査・X線検査など、一般臨床検査で全身の状態をチェック。脳梗塞の症状は他の病気である可能性もあるため、検査結果をもとに多角的な診断を行います。

■臨床病型診断
脳梗塞と診断された場合、心原性脳塞栓症・アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞のいずれに該当するのかを診断します。神経学的検査・一般臨床検査のほか、CT・MRI撮影・血管や心臓エコーなどを実施。血液検査では、血液凝固・血小板の機能に異常がないかどうかを精密検査します。

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献