脳梗塞治療の入院期間と治療費

日本では医療保険が設けられているため、病気や怪我の治療費は3割の負担で済むようになっています。けれど、いくら3割のみの負担と言っても、脳梗塞といった入院期間が長い病気だと入院費や治療費が重なるため、どの程度費用がかかるのか不安ですよね。いざという時に備えて、脳梗塞の平均入院期間や治療費を知っておきましょう。

脳梗塞は入院期間が長く、治療費の負担も平均より高め

病気で入院した場合の治療費のうち、平均自己負担額は154,812円と厚生労働省が発表しています。脳梗塞は平均よりも治療費が高額です。

治療費は診察費、治療材料費、手術費、療養管理費、入院費とさまざまな項目がありますが、脳梗塞の場合は入院期間がどうしても長くなりがちだからです。では、脳梗塞の治療にかかる治療費をチェックしておきましょう。

脳梗塞の平均入院期間は113.1日

全疾患の平均入院期間は31.9日と総務省のデータが出ています。脳梗塞の平均入院期間は113.1日。比べてみるとかなり入院期間が長いことがわかります。

理由としてはリハビリ期間が必要となるためです。脳梗塞は一時的に脳へ酸素や栄養が行き渡らなくなるため、脳の一部に障害ができることがあります。すると脳と繋がっている体の動きに異常が発症。脳の運動神経に影響があれば半身がマヒ状態になったり、左脳の言語中枢に影響があれば失語症になったりします。そうなると、これまで通りの生活は難しいものです。

しかし、放っておくと悪化の一途をたどるため、回復しやすい病気発症後の数ヵ月に集中してリハビリをしていきます。このリハビリに入院期間のほとんどが使われます。

といっても、いつまでもリハビリをするわけではありません。あらゆるリハビリは最大180日と期間が決まっています。また、脳梗塞の進行具合にもよるので症状が軽ければ1~3週間で帰宅も可能です。

脳梗塞の治療費、自己負担額の平均は183,471円

日本の治療費は国民健康保険や厚生年金保険があるため治療費は3割の負担で済みます。その3割負担の計算で出した結果、脳梗塞の平均自己負担額は183,471円です。

全疾患の治療費の平均は154,812円。比べてみると3万円ほど平均よりも高額となっています。

脳梗塞の治療自体は薬物治療の投与が基本です。大規模な手術をするケースは少なく、治療自体は大きな負担になりません。しかし、治療後は重い後遺症が残る可能性が高いため、後遺症を持ちつつも生活できるようにリハビリが長くなり、その入院費が治療費全体の負担を重くしている可能性はあります。

また、薬物投与ではなく頸動脈内膜切除術(CEA)やステント留置術といった手術を受けた場合、1回の費用は50万円ほど。その分、薬物治療手術代として少し高額になる可能性も考えられます。

健康保険でカバーできない費用とは

健康保険により治療費は3割の負担で問題ないとなっていますが、一部健康保険でカバーできない部分があります。それは入院時の快適性・利便性を向上するサービスや先進医療と分類される治療の類です。

例えば差額ベッド。差額ベッドとは、個室や少人数用の入院部屋のことで、正確には「特別療養環境室料」といいます。通常6~8人の大部屋での入院がほとんどですが、知らない人とカーテン越しに暮らしていくのは大変なもの。そこで多くの病院では個室や少人数部屋が用意されているのです。

個室だと7,812円、2人部屋だと3,130円と人が少ないほうが高額です。入院時の快適性は人それぞれになるため保険は使えず全額自己負担となります。他にも、時間外の心療を受けた場合や、規定以上の入院などは自己負担の対象です。

また、先進医療についてですが、脳梗塞の先進医療には「アルテプラーゼ静脈内投与による血栓溶解療法」という脳梗塞の原因となった血栓を溶かすという薬物治療があります。通常であれば、先進医療なので全額自己負担となりますが、こちらは企業の協力により薬(アクチバシン)が無償で病院へ提供されるため患者の負担は0円です。

なので、脳梗塞の場合、健康保険で負担できないのは入院時の快適性・利便性を向上するサービスに限ると覚えておくと良いでしょう。

回復期の入院期間は最長で180日間

回復期、つまりリハビリ期間は最長で180日間の長期入院が可能です。

脳梗塞を発症した直後は急な発症にも対応できるよう一般病棟にいますが、その間にも重篤な患者は次々入ってくるため退院する必要があります。そこで、回復期に入るとリハビリ病棟へ移動し、そこから180日の間になるべく早く回復できるようリハビリを積んでいくのです。

もちろん、軽い後遺症であれば数週間で退院できることもありますが、脳梗塞をはじめとする脳疾患の場合は後遺症が重い可能性が高いもの。半身マヒや失語症といった後遺症を持ちつつも生活できるようになるには、それだけ訓練が必要です。入院費は1日約1.5~2万円。それが数か月続くので比較的高額な治療費となるでしょう。

治療のための公的サポートを活用

脳梗塞の自己負担額の平均は183,471円と紹介しましたが、これは保険が適用される治療費や入院費だけのお話です。差額ベッドの自己負担をするサービスや入院に必要な生活用品代を含めると、軽く20万円超となるでしょう。

しかし、公的サポートを利用すれば自己負担額を安く抑えることができます。「高額療養費制度」や「傷病手当金」は高額治療を受ける人のための保険制度です。これらを利用すれば治療費を十数万円程度に抑えることも可能。

下記では、それぞれの制度の仕組みやどのくらい負担を軽減してくれるのかを解説します。

高額療養費制度

高額療養費制度とは、同じ月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が払い戻される制度です。

例えば自己限度額が100,000円でひと月にかかった治療費が150,000円だった場合、一度全額支払い、数か月後に50,000円を払い戻してもらえます。治療費が高くなったとしても結果的に一定以上になることはないので安心ですね。

さらに、これは世帯ごとの計算となります。一緒に住んでいる家族の内、1名が脳梗塞、他の人が別の病気になってしまったときでも、世帯全体でかかった治療費で計算できるのです。

気になる自己限度額ですが、これは世帯の所得状況や年齢によって変わります。以下は70歳未満の方の区分です。

70歳未満の方の区分

所得区分 自己負担限度額
1.区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
(報酬月額81万円以上の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
2.区分イ
(標準報酬月額53万円~79万円の方)
(報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
3.区分ウ
(標準報酬月額28万円~50万円の方)
(報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
4.区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
(報酬月額27万円未満の方)
57,600円
5.区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
35,400円

傷病手当金

傷病手当金とは病気や怪我で仕事を休んでいる間、事業主から十分な報酬を受けられない場合に支給される手当金です。脳梗塞で倒れると長期間の入院が予想されます。その間にも家族を養う必要があるので、一家を支える大黒柱が脳梗塞になった時でも安心ですね。

支給される条件は以下の通り。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができないこと
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと

3は2日休んで1日出勤して2日休むといった方法だとNG。3日間連続で休まないと適用外となるので覚えていてください。

支給される傷害手当金の額は、以下の計算で算出します。

支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均したがく÷30日×2/3

1日の平均給与の2/3の金額なので、例えば1日1万円の給与をもらっていれば、6,600円が傷害手当金となります。

脳梗塞の可能性がある人や家族・知人に脳梗塞の人がいる場合は、高額療養費制度や傷病手当金が利用できるようにしておくと良いでしょう。

この記事をつくるのに参考にしたサイト・文献